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ivy cageの工房に散らばる石ころのご紹介。
スノーキャップ・クォーツ
【Snowcap Quartz】Brazil
 
鉱物名:クォーツ
宝石名:ミルキー・クォーツ
英名:Milky Quartz
和名:乳石英/乳白水晶
モース硬度:7
劈開:不明瞭
産地:ブラジル
処理:-
流通名:スノーキャップ・クォーツ
     エンジェルケープ・クォーツ
   
 
2014年当時、新種としてフワッと話題になったブラジル産の水晶。
結晶面に白い水晶のドゥルージー(集晶)が形成され、雪が降り積もったように見えることから「スノーキャップ」の名前で流通しました。
パワーストーン界隈では、ドゥルージー部分をケープに見立てて「エンジェルケープ・クォーツ」とも呼ばれるようです。
本体がアメシストになっているものが多いようですが、写真の石は半透明のミルキー・クォーツ。
茶色の内包物も相俟って、切り立った雪山の景色のようです。
カクタス・アメシスト-サボテン型紫水晶
【Cactus Amethyst】South Africa
    
鉱物名:クォーツ
宝石名:アメシスト
英名:Amethyst
和名:紫水晶
モース硬度:7
劈開:不明瞭
産地:南アフリカ

処理:-

流通名:カクタス・アメシスト
     カクタス・クォーツ
     スピリット・クォーツ
     フェアリー・クォーツ
     サボテン水晶/サボテン型紫水晶
     精霊水晶
 

カクタス・クォーツ。和名もそのまま、サボテン水晶。
大きなポイントの側面をびっしりと細かな結晶に覆われた姿が、棘に覆われたサボテンを髣髴とさせるのでしょう。といっても実際サボテンはこういう形ではないので、雰囲気サボテンとでも言えばよいのか。
南アフリカ産のこの標本は、ほんのりアメシスト。
適度な透明感がありつつ、淡藤色の美しい色合いをしています。
 
「スピリット・クォーツ」はもちろんスピリチュアル系の流通名で、例によってメロディー女史の推薦したパワーストーンのひとつとのこと。
カクタス・クォーツと同じものを指すようですが、何がどうスピリットなのかははっきりしません。
曰く、南アフリカのシャマンたちが精霊を召喚するのに用いただとか。
曰く、南アフリカでよく使われているスピリット洗剤の色に似ているからだとか(?)
カクタス・クォーツのうちアメシストが「スピリット・クォーツ」で、シトリンなら「サンシャイン・クォーツ」なのだ、とか(?)
スピリチュアルの説明書きはどれもそれぞれに噛み砕かれた上にコピペされて根拠がさっぱり分からないので、原典をご存知の方はぜひ教えてほしいです。
セプター・スモーキー・クォーツ-松茸煙水晶
【Sceptre Smoky Quartz】Brazil
 
鉱物名:クォーツ
宝石名:スモーキー・クォーツ
英名:Smoky Quartz
和名:煙水晶
モース硬度:7
劈開:不明瞭
産地:ブラジル

処理:-

流通名:セプター・スモーキー・クォーツ
    セプター・クォーツ
    松茸水晶
 
  
「セプター」は王笏。既に結晶した水晶のトップを一回り大きな水晶が覆うように結晶した形に対する名前で、キノコにも似ていることから和名は松茸水晶。
画像のセプター・クォーツはブラジル産で、レモン・クォーツにも似た淡い茶色の水晶を軸として、骸晶を示すスモーキー・クォーツの傘が覆っています。
   
【Sceptre Smoky Quartz】Brazil
傘の部分はスケルタル。
  
一見すると傘の色が濃く見えますが、透かすと表面近くにある墨を引いたようなカラーゾーニングによるもので、実際には軸の水晶よりクリアであることが分かります。

【Sceptre Smoky Quartz】Brazil
結晶に突き刺さるモスコバイト。ぎらりと光る。
 
裏側を見ると、軸の水晶の数ヶ所にモスコバイト(白雲母)が食い込んでいました。
 
【Sceptre Smoky Quartz】Brazil
 
また、トップ付近をルーペで観察すると、丸い気泡を発見。
角度を変えると動くことから、水入りであることが分かります。
骸晶を示す水晶に水入りが見つかりやすいのは、結晶面の窪みに入り込んだ水がそのまま閉じ込められてしまう為。
水入りの表記がなくても、一度くまなく探してみるのがおすすめです。

エレスチャル・クォーツ
【Elestial Quartz】Pakistan
 
鉱物名:クォーツ
宝石名:ロック・クリスタル
英名:Rock Crystal
和名:水晶
モース硬度:7
劈開:不明瞭
産地:パキスタン

処理:-

流通名:エレスチャル・クォーツ(ジャカレー、スケルタルを含む場合あり)
     骸骨水晶(誤称を含む。ジャカレー、スケルタルと関連)
 
 
「エレスチャル」はパワーストーン関係のコマーシャルネームで、産地や内包物に関わらず、晶癖に対して名付けられたもの。
鉱物学・宝石学に基づいたものではなく、また明確な定義も定められていませんが、凡そ「複数の結晶からなるごつごつとした複雑な形」を指します。
定義の曖昧さからジャカレー・クォーツスケルタル・クォーツと混同される(もしくは両者をエレスチャルに含む)場合も多く、和名としては本来スケルタルを指す「骸骨水晶」が使われているのを見かけます。
 
【Elestial Quartz】Pakistan
透明度は高いが、内部の気泡やクラックが多く一見白っぽい。
よく探すと水入りが紛れていたりする(右)
  
幾つもの結晶が折り重なり、骸晶を示すものや、他種鉱物や気泡、水など内包物を多く含む場合もあり目に楽しい水晶です。
その複雑さから「水晶の最終形態」「通常より長い時間を掛けて成長を繰り返した」などと語られることがありますが、実際には逆で、通常よりも早い速度で成長した為に出来た形であることがわかっています。
恐らくは珪酸濃度が高い熱水の中で、複数の結晶が一気に成長した為に入り組んだ形になったのではないでしょうか。
少なくともスケルタル同様に骸晶を示すものに関しては、成長が急速であったことは明らかです。(成長に長い時間を掛けた場合、面の部分にも珪酸が行き渡り凹みが生じない)
 
【Elestial Quartz】Pakistan
骸晶を示すエレスチャル。
  
エレスチャルはヒーラーたちによって、非常に優れたパワーストーンとしてブームを巻き起こしました。それまでこの特殊な晶癖を指す名前がなかった為に、パワーストーン業界の外でも「エレスチャル」という名前が流用されています。
 
 
*スーパーセブンとエレスチャル*
現在、市場には二種類の「エレスチャル」があります。
本来エレスチャルと呼ばれていたものは上記の通り。
もう一つは誤称としてのエレスチャルで、これはスーパーセブンにも関連しています。
「スーパーセブン(セイクリッド・セブン)」は7種の鉱物が共生するエレスチャルであり、「ブラジルのエスピリット・サント州の鉱山から産出され、名付け親のヒーラーであるA・メロディ女史が認定したもの」のみを指します。(現在は鉱山が水没した為、新たな産出はないとのこと)
即ち「エレスチャル形状の水晶に、アメシスト、スモーキー・クォーツの部分を含み、ゲーサイト、レピドクロサイト、ルチル、カコクセナイトを内包し、メロディ女史の認定書がついた水晶」が本物のスーパーセブン。ただし同じ鉱山から産出しメロディ女史が認定していれば、必ずしも7種が揃っていなくても良いということです。(ここを徹底していれば面白かったのに)
 
が、これが大ブレイクしてしまった為、当然石を扱う卸業者たちは産地も形状も無関係に、似たような内包物入りの水晶を「スーパーセブン」として売り出しました。しかし認定されていないことを突かれると面倒な上に、原石の段階で7種の鉱物が共生していたかどうかなど知る由もないので、上記の内包物を含む水晶を「スーパーセブン」の代わりに「エレスチャル」として流通させました。他に「複数の内包物の存在を否定せず、且つ売れそうな名前」がなかったからです。
※この辺りは自分の関係する卸業者で実際に起こっていたことで、もしかしたら業界内に別の経緯があったかもしれません。とても興味があります。
  

スーパーセブン又はエレスチャルと誤称されがちなものたち。
 
インドからはゲーサイトやレピドクロサイト、アメシストが共生するエレスチャルが出ていますが、現在流通している「スーパーセブンっぽいエレスチャルの加工品」がこれとイコールかというとそうでもなく。
「ゲーサイト、レピドクロサイト、ルチル、カコクセナイトを内包する水晶かアメシストかスモーキークォーツかなんかそのあたり」が見境なく「エレスチャル」とされてしまい、区別が面倒になったかそもそも知識や興味のない小売業者たちもこれに倣った為、市場に流通するエレスチャルは見た目も価値基準も全く違う二種類が混在することになりました。
  
赤っぽければストロベリー・クォーツに、
黒っぽければスーパーセブン又はエレスチャルにと呼称が変わる
可哀想なものたち
 
この経緯から「エレスチャルとは特定の内包物入りの水晶を指す名前である」という認識が誤りであることが分かりますし、エレスチャルを求める際にはこれを頭に入れておかないと、違うものを入手してしまうことになるわけです。
ちなみに「スーパーセブン」という名前も、「メロディ女史の認める本物ではないが似てるので便宜上スーパーセブンと呼びます」という判断を下した業者によって定着してしまったので、例えば全く同じゲーサイトinクォーツが、扱う業者によってスーパーセブンになったりエレスチャルになったりルチルクォーツになったりします。
 
そもそもエレスチャルを磨いた場合は特有の外観が損なわれてしまうので、ラウンドやタンブルなどに加工されているものが本当に元々エレスチャルだったかは甚だ疑問ですし、本当にそのように加工しているのであれば原石原理主義者(もったいないおばけと読む)の出番だと思っています。

スケルタル・アメシスト-骸骨紫水晶-2
アメシスト・エレスチャル・クォーツ
【Skeletal Amethyst】Brazil
  
鉱物名:クォーツ
宝石名:アメシスト
英名:Amethyst
和名:紫水晶
モース硬度:7
劈開:不明瞭
産地:ブラジル

処理:-

流通名:スケルタル・アメシスト
     エレスチャル・アメシスト(誤称を含む。スーパーセブンと関連)
     スーパーセブン(誤称を含む)
     ウィンドウ・クォーツ(窓の意)
     フェンスター・クォーツ(窓の意)
     骸骨紫水晶
 

ブラジル産「エレスチャル・アメシスト」のポリッシュとして購入。
ただしこれもエレスチャルというよりスケルタル・クォーツ(骸骨水晶)で、結晶面の凹みと内部に白~茶色の粘土鉱物のようなものが付着しています。
元の形が分からない為、これがエレスチャル(複数の結晶からなるごつごつとした複雑な形)の一部であったのか、元々スケルタル要素のみであったのかは不明です。
あるいはゲーサイトやレピドクロサイト等特定の内包物を含む水晶を「エレスチャル」と誤称する傾向が強いので、それに則っての呼称かもしれません。
 
【Skeletal Amethyst】Brazil
  
珪酸濃度の高い環境下で水晶が急速に結晶する際、成長の早い陵角に対し面の部分が取り残される形となり、結晶面の中心に髑髏の窪み又は窓のような凹みが生まれます。
 
【Skeletal Amethyst】Brazil
赤い小さな結晶はレピドクロサイト。右は底面から見た様子。
 
結晶自体の透明度は高く、ロック・クリスタルの部分とアメシストの部分、更に全体に散りばめられるように内包されたレピドクロサイト、奥の方には細長く伸びたゲーサイト結晶も見て取れます。
裏から見ると中心のアメシストがややトラピッチェ気味になっているのが分かり、こういう原石のままでは埋もれがちな個性がはっきりと出てくるのがポリッシュの良いところ。
ルーペで見るのが楽しくて仕方がありません。
  
【Skeletal Amethyst】Brazil
中の空洞のひとつにくっきりと丸い気泡。
わずかな水が取り残されているのがわかる。
 
茶色い鉱物の成長によるものと思われるクラックに紛れて内部にはいくつかの小さな空洞があり、その中のひとつに水入りを見つけてガッツポーズからの激写。
通常、水入りは付加価値をプラスされ明確に目印がつけられているものが多いですが、これはクラックが多いのでひょっとしたら気付かれなかったのかもしれません。

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銀と鉱物でアクセサリーを作りつつ
宝飾業界のはじっこのほうで
いろいろ考えたり調べたり遊んだりしている
ただの石好きです。
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