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ivy cageの工房に散らばる石ころのご紹介。
エメラルド-翠玉
 
【Emerald】Canaiba, Brazil
 
鉱物名:ベリル
宝石名:エメラルド
英名:Emerald
和名:翠玉/緑玉
モース硬度:7.5-8
劈開:不明瞭
産地:コロンビア、ブラジル、マダガスカル、ザンビア、南アフリカ、インドetc...

処理:透明度の改善を目的とした透明材含浸(ほぼ全て)

流通名:エメラルド
     レッド・エメラルド(レッド・ベリルの誤称)
 
 
「傷のないエメラルドを探すのは、欠点のない人間を探すより難しい」
そんな言葉の通り、エメラルドは生成の過程で多くのインクルージョンを含む石です。
エメラルドはベリルの一種。特有の美しい緑色は微量のクロムやバナジウムが入り込むことによって得られるものですが、このインクルージョンの混入こそがベリル結晶の成長を阻害し、傷が生まれる原因となっています。
良質なエメラルドとは、傷が少なく、且つ発色の美しいものを指しますが、完璧に傷のないエメラルドを得ることはまず現実的ではありません。
傷はむしろエメラルドの天然の証とも言えます。
 
エメラルドは、結晶の成長過程で液体、気体、個体のインクルージョンを閉じ込めた状態で産出します。その原石をカットすると、カット面からインクルージョンが流出し、結晶内部に空洞が出来るので、どうしても透明度が下がってしまいます。
そのため、人為的な加工によって透明度が下がったエメラルドを、本来の美しい状態に復元するという意味で、透明材の含浸処理が認められています。
 
通常、ジュエリー・アクセサリーに使用されるエメラルドのほとんど全てには、見た目の透明度の改善を目的とした透明剤(無色オイル、合成樹脂等)の含浸処理が施されています。
そのことを意識せずにいると、過度な水洗いによってオイルが流出して白っぽくなってしまったり、目に見えないクラックに衝撃が加わることである日突然欠けてしまったりといったトラブルも起こります。
一見、傷がないように見えても、超音波洗浄やリペア・リフォームを断られることがあるのは、そういった理由からです。
※「エメラルドはサラダ油で含浸されている」という話があるそうですが、実際には、エメラルドに屈折率が近く、時間の経過により固形化するツェーデル油が用いられます。
※オイルが抜けてしまったエメラルドを一時的に見栄え良くするために、サラダ油に浸す方法が紹介されていることがあります。サラダ油でも含浸は出来ますが、屈折率が高すぎてツェーデル油ほどの改善効果はなく、固形化もしないためすぐに流出してしまうので、飽くまで一時的な処置となります。

エメラルドの語源は、サンスクリット語で緑色の石を意味する「スマラカタ」。
これが変化し、ギリシア語で「スマクラグドス」→ラテン語で「スマラグダス」→俗語で「スマラルダス」→古フランス語で「エスメラルド」→現在の「エメラルド」になったといわれます。
色の名前で「エメラルド・グリーン」がありますが、この色はやや明るめのエメラルド。エメラルドのなかでは、やや暗めの深い緑色が最高の色と言われています。
産地によっても品質や色合いが異なりますが、傷が少なく色の美しいエメラルドが欲しい場合は、コロンビア産のものがおすすめです。
 

 
*レッド・エメラルド?*
エメラルドをエメラルドたらしめるものは、クロムとバナジウムによる緑色の発色。
しかし最近「レッド・エメラルド」という言葉を聞きます。
これは、ユタ州のワーワー山脈で産出されていた(現在は絶産)赤いベリルのフォールスネームです。
赤いベリルの宝石名は「ビクスバイト」ですが、別の鉱物である「ビクスビ鉱」と名前がそっくりで紛らわしいことが悩みの種。「レッド・ベリル」という呼称もあるのですが、ベリルという名前はマイナーなので、売りやすい「エメラルド」の名前を拝借し、「赤いエメラルド」が出来上がったということのようです。
もちろん赤いエメラルドは存在しないため、美しい赤い「エメラルド」に出会ったら、赤いベリルとして扱ってください。
アクアマリン-藍玉
 
【Aquamarine】Pakistan
 
鉱物名:ベリル
宝石名:アクワマリン/アクアマリン
英名:Aquamarine
和名:藍玉
モース硬度:7.5-8
劈開:不明瞭
産地:パキスタン、アフガニスタン、モザンビーク、ブラジル、インド、マダガスカルetc...

処理:加熱

流通名:アクアマリン
     アクワマリン
     アクアマリン・キャッツアイ(チューブインクルージョン内包)
     モス・アクアマリン(イルメナイト内包)
     ブラック・アクアマリン(イルメナイト内包)
     イエロー・アクアマリン(ヘリオドールの誤称)
     グリーン・アクアマリン(グリーン・ベリルの誤称)
     カラーレス・アクアマリン(ゴシェナイトの誤称)
     ピンク・アクアマリン(モルガナイトの誤称)
 
 
画像は雪花状インクルージョンを内包するアクアマリンの柱状結晶。
名前の通り、白い雪のような内包物が見られます。
チューブ状インクルージョンを多く内包するものはシャトヤンシーを示すことがあり、「アクアマリン・キャッツアイ」として流通します。
 
3月の誕生石としても有名なアクアマリンですが、鉱物としてはベリルの一種。
ベリルは不純物を含むことでいくつかの色に発色し、その色によって宝石としての名前が変わります。
鉄を含むベリルのうち、青いものは「アクアマリン」。黄色なら「ヘリオドール(ゴールデンベリル)」。黄緑なら「グリーンベリル」。
同じ緑色でも、クロムかバナジウムを含んでやや濃い緑色をしたベリルは「エメラルド」。
マンガンを含むベリルのうち、ピンク色なら「モルガナイト」、赤なら「ビクスバイト」。
純度が高く、無色のベリルは「ゴシェナイト」。
他にも産地や特徴によって細かく呼び分けられることがありますが、大まかに分けるとこんな感じです。
 
宝石に於いて、同じ鉱物でも色が違えば種類や価値も変わってきます。同じベリルでも、色や内包物の種類が違えばそれぞれ価値が異なります。
しかし、青くないベリルでもアクアマリンの名前で売られることがあります。「イエロー・アクアマリン(ヘリオドール)」「グリーン・アクアマリン(グリーン・ベリル)」「カラーレス・アクアマリン(ゴシェナイト)」「ピンク・アクアマリン(モルガナイト)」といった具合。
決して青以外のベリルの価値が低いわけではなく、ただ単純に「アクアマリン」が有名で売りやすい名前だというだけの理由です。
「アクアマリン」は海の水の色を意味する名前なので、これでは海水の色が黄色やピンクになってしまいます。
また、ヘリオドール、グリーン・ベリル、モルガナイトは加熱すると青くなるため、加熱処理をしてアクアマリンに変えてからルースやビーズになるものが多くあります。だから加熱によるクラックが多く入った、薄い水色のアクアマリンがたくさんあるのです。
 
ベリルという鉱物名は、ギリシア語の「beryllos(ベーリュッロス/青緑の海水のような宝石の意)」に由来します。同じ「beryllos」から枝分かれした言葉に「brilliance(輝き)」があるのは、キラキラと輝く海の水のような宝石のイメージがあったためでしょうか。
  
  
【Ilmenite in Aquamarine】Brazil
 
*イルメナイト イン アクアマリン*
一般にアクアマリンとしてイメージされるのは、明るい水色~青色のものですが、イルメナイト(チタン鉄鉱)を内包する「イルメナイト イン アクアマリン」は、イルメナイトの量や入り方によって色合いや模様が異なって見え、それぞれに名前がついています。
黒い塵のようなイルメナイトが点在する「モスアクアマリン」、イルメナイトが多く含まれ黒っぽく見える「ブラック・ベリル」、雨のような縞模様に見える「バンデット・ベリル/アクアマリン」、鱗状のイルメナイトに光が反射しアベンチュレッセンスやシラーが見られる「スター・ブラック・ベリル」「シャイニーティック・アクアマリン」「ブラックベリル・キャッツアイ」等の種類があり、これらの内包物が美しく見えるアクアマリンは、加熱処理された水色のアクアマリンよりも高価です。
ダイヤモンド-金剛石
【Diamond】Congo
 
鉱物名:ダイアモンド
宝石名:ダイヤモンド
英名:Diamond
和名:金剛石
モース硬度:10
劈開:4方向に完全
産地:ロシア、 ボツワナ、コンゴ、オーストラリア、南アフリカ共和国etc...

処理:加熱、放射線照射、レーザードリリング、漂白

流通名:ダイヤモンド
     アルマース(主に未研磨を指す)
     ブリリヤーント(カット石を指す)
 
 
ダイヤモンドは、天然に産出する鉱物のうち最も硬い石。
モース硬度(摩擦に対する強さ)は最高の10で、ダイヤモンド同士か、もしくはハイパーダイヤモンドや超硬度ナノチューブなどの人工物質でなければ傷をつけることが出来ません。
ただし劈開(一定の方向に割れる性質)は完全のため衝撃には弱く、この劈開を利用してカッティングを施したものがジュエリーとして利用されます。
名前はギリシア語の「アダマス(侵されざるもの)」から。
その名が示すとおり非常に丈夫な石で、摩擦だけでなく太陽光、硫酸・塩酸などの薬品にも耐えます。
宝石としては、基本的に無色透明が最上級として扱われることが多いものの、カラーやインクルージョン、大きさ等の付加価値によって個々の価値は大きく左右されます。
工業用としても非常に有用で、人工的に作られた合成ダイヤモンドも多く流通しています。
エレスチャル・カルサイト
【Elestial Calcite】Mohave, Arizona, USA
 
鉱物名:カルサイト
宝石名:カルサイト
英名:Calcite
和名:方解石
モース硬度:3
劈開:3方向に完全
産地:アメリカ

処理:-

流通名:エレスチャル・カルサイト
     エレスタイト
     ホワイト・モルダバイト(誤称)
     エンジェル・カルサイト(翼に似た形状から)


「ホワイト・モルダバイト」という名前で見掛けることの多いこの石ですが、実はモルダバイトでもテクタイトでもなく、カルサイトの一種とのこと。
何故モルダバイトと銘打っているのかといえば、「表面の凹凸が似ているから」という、実にシンプルな理由からだそうです。
 
モルダバイトとは、チェコのボヘミア地方で採れる深い緑色のテクタイト(隕石の衝突により地表の鉱物が熔融して形成された天然ガラス)のこと。
テクタイトには黒~褐色が多く、緑のモルダバイトや、薄い黄色のリビアン・グラスのような明るい色味のものは装飾品としても人気で、本物・偽物ともにたくさん流通しているのですが、白いものは見たことがありません。
 
「エレスチャル・カルサイト」とも呼ばれるこのカルサイトは、アメリカ・アリゾナ州のモハーヴェ砂漠で産出されます。
母岩や他種鉱物の結晶に成長を阻害されることなく、独特の形状に結晶したもので、表面の質感が似ていたことから発見者がモルダバイトと思い込み、そのまま「ホワイト・モルダバイト」と名付けられたのだとか。

せっかくなのでモルダバイトとツーショットを撮ってみましょう。
   
左:モルダバイト / 右:エレスチャル・カルサイト 
  
細かく波打つような凸凹の質感は、確かにモルダバイトに似ています。
また、翼に似た形をしているものは、「エンジェル・カルサイト」の愛称でも呼ばれています。

※この石を鑑別した結果、カルサイトではない(少なくとも純粋ではない)との回答を得た
 という話を聞きます。
 詳細については言及されていないため、今のところ詳細は不明です。
 複雑な特徴を持つ鉱物の場合、通常鑑別で「不明」の結果が出ることも少なくありません。宝石業界ではあまりメジャーな石ではないものの、更なる追加情報を望みたいところです。
スペサルティン on スモーキー・クォーツ
【Spessartine on Smoky Quartz】中国・広東省

鉱物名:クォーツ/スペサルティン
宝石名:スモーキー・クォーツ/スペサルティン・ガーネット
英名:Spessartine on Smoky Quartz/Spessartine with Smoky Quartz
和名:満礬柘榴石/煙水晶
モース硬度:5(スペサルティン)/7(スモーキークォーツ)
劈開:なし(スペサルティン)/なし(スモーキークォーツ)
産地:中国、タンザニア、アフガニスタン、ドイツ

処理:-

流通名:スペサルティン on スモーキー・クォーツ
     スペサタイト on スモーキー・クォーツ
     マンダリン・ガーネット on スモーキー・クォーツ


中国・広東省産のスペサルティンとスモーキー・クォーツの共生体。
黒に近い半透明のスモーキー・クォーツのポイントに被さるように、明るいオレンジ色のスペサルティン・ガーネットの結晶が成長しています。よく見るとクォーツ内部に入り込んでいるものもあります。

スペサルティンの名前の由来はドイツの産地Spessart(スペッサルト)に因んだもの。
ガーネットグループの中でのスペサルティンはパイラルスパイトに分類されます。
パイラルスパイトとは、アルミニウムを含むガーネットであるパイロープ、アルマンディン、スペサルティンの3種類の名前を合わせたもの。
これらはアルミニウム・ガーネットと呼ばれ、それぞれアルミニウムの組成比が一定で、加えてマンガンを含むものがスペサルティンとなります。マンガンの一部が鉄イオンに置換されるとアルマンディンに近づき、鉄イオンが多くなるほど赤くなります。
特に鮮やかなオレンジ色のものは、柑橘類を連想させることから「マンダリン・ガーネット」の愛称で親しまれています。
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プロフィール
HN:
Yati
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性別:
女性
職業:
アクセサリー作家
趣味:
写真、音楽、鉱物の蒐集、調べもの
自己紹介:
銀と鉱物でアクセサリーを作りつつ
宝飾業界のはじっこのほうで
いろいろ考えたり調べたり遊んだりしている
ただの石好きです。
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