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ivy cageの工房に散らばる石ころのご紹介。
ブルッカイト in クォーツ-板チタン石入水晶
【Brookite In Quartz】Brazil
鉱物名:クォーツ
宝石名:ブルッカイト in クォーツ
英名:Brookite In Quartz
和名:板チタン石入水晶/白金水晶/白金針水晶
モース硬度:7(水晶の硬度)
劈開:不明瞭
産地:ブラジル、パキスタン、イギリス、フランス、アメリカ、オーストラリアetc…

処理:透明剤の充填(一部)

流通名:ブルッカイト(ブロッカイト)in クォーツ
     板チタン石入水晶
     プラチナ・ルチル・クォーツ/白金針水晶(ブルッカイトを伴う銀色ルチル入り)
     プラチナ・クォーツ/白金水晶(ブルッカイトを伴う銀色ルチル入り)


貴金属の名称+ルチル・クォーツのネーミングは大抵、色のイメージから。
ただし「プラチナ・ルチル・クォーツ」の場合は少し違い、「シルバー・ルチル(銀灰色のルチル)」の特に針が太いものや、ブルッカイト(板チタン石)を伴ったものを指します。

ブルッカイトは二酸化チタンの板状結晶で、ルチルとは同質異像の関係。
低温下で水晶に内包されたチタンがブルッカイトとなり、その後温度が上昇すると、ブルッカイトを基盤として針状結晶(ルチル)が成長して櫛のような形になります。
フランス・アルプス産のもののなかには、同じく二酸化チタンのアナテース(鋭錐石)や、長石のアルバイトを含むことも。
「プラチナ・ルチル」のように、ルチレイテッド・クォーツの一種として流通することが多いようですが、プラチナを連想させる白~銀灰色だけでなく、赤や金茶に近い色もあります。
また、水晶に内包されていない単体のブルッカイトでは、暗い赤茶~黒っぽいものが多く見られます。
白っぽい色をしたものでも、透過光では赤色が見えます。
アイス・クリスタル-ヒマラヤ蝕像水晶
【Ice Crystal】
Manikaran, Parvati Valley, Kulu, Himachal Pradesh, India
鉱物名:クォーツ
宝石名:クォーツ
英名:Ice Crystal
和名:ヒマラヤ蝕像水晶
モース硬度:7
劈開:不明瞭
産地:インド

処理:-

流通名:アイス・クリスタル
     ヒマラヤ・アイス・クリスタル
     ヒマラヤ蝕像水晶
     エッチド・クォーツ(蝕像水晶全般を指す)
     ニルヴァーナ・クォーツ/ニルヴァーナ・ストーン/ニルヴァーナ・クリスタル


ヒマラヤの麓に位置するクル地区マニカラン産のアイス・クリスタル。
うっすらとピンク色をしたものは、表面に酸化鉄が付着しているためです。
インド北部、ヒマーチャル・プラデーシュ州のクル渓谷は、標高約6000mの氷河地域。
温暖化の影響によってこの氷河が溶けた場所で、1995年に発見されたのが「アイス・クリスタル」なのだとか。
凸凹とした奇妙なエッチング(蝕像)は、水晶が結晶・成長する際に他種鉱物に成長を阻害されたことを表しています。
水晶がフッ化水素に溶かされたことを示すトライゴーニック(逆三角形の蝕像)も見られます。

※凸凹のエッチングが氷によるものでは?という話もありますが、石英が結晶・成長するほどの高温下で氷が溶けずにいられるものなのでしょうか…?

アイス・クリスタルはクラスター(群晶)になることなく、ひとつひとつの結晶がばらばらの状態で産出します。なかにはC面(底面)を持つ結晶もあり、これは天然水晶には非常に珍しい特徴となります。
また、結晶同士を軽く打ち合わせると高く澄んだ音が響くため、シンギング・クリスタルのひとつとしても知られています。
こちらは是非お試しあれ。
サルファー in クォーツ-硫黄水晶
Sulfur in Quartz】Irece, Bahia, Brazil

鉱物名:クォーツ
宝石名:サルファー in クォーツ/レモン・クォーツ
英名:Sulfur in Quartz/Lemon Quartz
和名:硫黄水晶/檸檬水晶
モース硬度:7(水晶の硬度)
劈開:なし
産地:ブラジル、ロシア

処理:-(硫黄内包によるもの)
    スモーキー・クォーツ照射+加熱(透明なもの)
    ロック・クリスタル照射+加熱(透明なもの)

流通名:サルファー in クォーツ(硫黄内包のみ)
     硫黄水晶(硫黄内包のみ)
     レモン・クォーツ(スモーキークォーツ加熱を含む)
     檸檬水晶(スモーキークォーツ加熱を含む)
     レモン・シトリン(スモーキークォーツ加熱)
     スター・レモン・クォーツ(レモン色ミルキークォーツ。アステリズムを示す)


画像はブラジル・バイーア州イレセー産のサルファーinクォーツ。
サルファーinクォーツは、硫黄を内包することにより半透明~不透明のレモン色になった水晶のこと。「レモン・クォーツ」「硫黄水晶」とも呼びます。
割れたり傷付いたりすると、微かに硫黄の匂いがするそうです。
黄色い水晶といえばシトリンですが、シトリンの発色は含有された鉄によるもの。
一方サルファーinクォーツのレモン色は、透明な水晶に内包された硫黄自体の色が透けて見えているものなので、シトリンとは一応区別されているようです。
因みに「レモン・シトリン」という宝石もありますが、こちらは以下に挙げる、透明なレモン色の水晶のことを指しています。

Burnt Smoky Quartz】Brazil

*透明なレモン・クォーツ*
「レモン・クォーツ」は本来、硫黄によるレモン色が特徴の水晶のことを指していましたが、現在市場に流通している「レモン・クォーツ」(特に装飾品)のほとんどは、透明なレモン色をした水晶です。
硫黄が発色原因のレモン・クォーツであれば、黄色く見えるほど硫黄が内包された時点で透明度はなくなってしまい、透き通ったレモン色にはなりません。

「レモン・シトリン」とも呼ばれる透き通ったレモン色の水晶の正体は、スモーキー・クォーツや透明水晶の色を照射と加熱によって調整した処理石、もしくはガラスの模造品。
シトリンの記事でも触れましたが、市場に流通する大半のスモーキー・クォーツには色を濃く整えるための照射処理が施されていますし、アルミニウムイオンを含む水晶を照射することで作り出すことも出来ます。
スモーキー・クォーツを加熱すると色が薄くなり、鉄分の含有具合によって様々な色調のシトリンになります。
透明なレモン・クォーツもこの一種であり、発色原因は硫黄ではなく鉄。
レモン色の水晶なので「レモン・クォーツ」という名前自体はしっくりくるのですが、サルファーinクォーツとの混同のために、透明のレモン・クォーツが硫黄入り水晶として扱われていることが少なくありません。
そのためか、硫黄入り水晶は「レモン・クォーツ」の名称を避け、わかりやすく「サルファーinクォーツ」と称されることが多くなっている様子。

画像のスフィアは、ブラジル産スモーキー・クォーツへの加熱によって作られたレモン・クォーツ。一部にスモーキー・クォーツのファントムが見られます。



*スター・レモン・クォーツ*
上記二つとはまた別に、アステリズム(スター効果)を示す「レモン・クォーツ」があります。
こちらはレモン色をしたマダガスカル産のミルキー・クォーツ(またはジラソル・クォーツ)で、外見は乳白色の半透明。
「イエロー・ミルキー・クォーツ」「イエロー・ジラソル・クォーツ」とも呼ばれます。

ミルキー・クォーツのアステリズムは、特有のミルキーカラーの発色原因である微細な結晶によるもの。
内包物が酸化チタンの場合は、これが針状結晶(つまりルチル)となって平行に並んでいるとシャトヤンシー(キャッツアイ効果)が、更に2~3方向に交差しているとアステリズム(スター効果)が現れます。
内包物がシリマナイトの場合も、結晶は繊維状のため、ルチルと似た効果を示すようです。
内包物がコロイド状のアルミナ(酸化アルミニウム)の場合は、アステリズムの他にオパレッセンス(オパールのような乳白色の散乱光)やプレイ・オブ・カラー(遊色効果)を示します。ミルキー・クォーツのうち、「ジラソル・クォーツ」や「メタモルフォシス」と呼ばれるものにこの特徴が見られます。

因みにこれらのスターはダイアステリズム(透過光によるスター効果)なので、光を当てるなら表からではなく裏側から。
ペンライトや晴れた日の太陽などの強い光を当てると、4~6条のスターが見られます。
是非お試しあれ。
グリーン・クォーツ-緑水晶
グリーン・クォーツ
【Green Quartz】

鉱物名:クォーツ
宝石名:グリーン・クォーツ
英名:Green Quartz
和名:緑水晶
モース硬度:7
劈開:なし
産地:ブラジル、アメリカ、ジンバブエ

処理:照射+加熱(グリーン・クォーツ)
   加熱(グリーンド・アメシストのみ)

流通名:グリーン・クォーツ(緑色のクォーツを指す)
     グリーンド・アメシスト(誤称含む)
     グリーン・アメシスト(誤称含む)
     プラシオライト(誤称含む)


「グリーンド・アメシスト」という宝石があります。
1954年、ブラジルのバイア州のモンテズマ鉱山から産出されたアメシストを約650℃で加熱したところ、通常は黄色く変化しシトリンになる筈が、この産地のアメシストは透明な若草色に変化しました。
「アメシスト」は紫色の水晶を指す宝石名です。
緑色であるならばアメシストではなく通常はグリーン・クォーツと呼ばれますが、緑色に変化するアメシストが珍しかったこともあり、このアメシストには特別に「グリーンド・アメシスト(緑色になった紫水晶)」のコマーシャルネームがつけられました。
また、ギリシア語の「明るい緑色」を由来とする「プラシオライト」という愛称もあります。
ブラジルの他にもアメリカのアリゾナ州、カリフォルニア州、ネバダ州、ジンバブエ等でも同じ性質を持つアメシストが産出しましたが、産出量は少なく、大変に稀少且つ高価なものでした。
 
しかしある時から、大粒で質の良い「グリーンド・アメシスト」が大量に流通するようになり、それが人為的に放射線の照射と加熱処理が行われたグリーン・クォーツであることが分かりました。
これは「天然の照射により、加熱のみで緑色に変化するアメシスト」である従来のグリーンドアメシストとは異なるため「グリーンド・アメシスト」「プラシオライト」とは別のものと判断されたのですが、市場ではすっかり同じものとして定着してしまいました。
 
現在、大粒のルースやビーズとして安価で入手出来る「グリーンド・アメシスト」は、ほとんどがこの照射・加熱処理によるグリーン・クォーツであると考えられます。
しかしその二種類のグリーン・クォーツが区別されることはなく、多くの場合「モンテズマ産(または他産地)の稀少な緑色のアメシスト」として紹介されています。
これだけたくさん、しかも安価に流通していて、稀少性をアピールされることには疑問が残ります。
宝飾業界ではいつものことといえばそれまでですが、これではまるで木を隠す森のよう。
本当のグリーンド・アメシストに巡り合うには、ちょっとひと手間掛かります。


プラシオライト グリーンド・アメシスト
【Prasiolite】LOC.Montezuma,Bahia,Brazil

*プラシオライト/グリーンド・アメシスト*
ブラジル・バイア州のモンテズマ鉱山から産出された、本家「グリーンド・アメシスト」。
非常に淡い色をしていますが、抹茶色寄りの渋めのグリーンもあるようです。
こちらは加熱のみで出る色。
地熱による加熱のみで、産出時に既に緑色に変化しているものは「プラシオライト」と呼び分けられている、という話もあります。


アメグリーン
【Amegreen】Brazil

*アメグリーン*
こちらはブラジル産(鉱山は不明)で、「アメグリーン」と呼ばれているもの。
やや渋めのグリーンクォーツに、ラヴェンダーカラーのアメシスト部分が残っています。
なかにはこの2色がファントムになっているものも。
ブラジルの他に、南アフリカでも産出します。
ゲーサイト in クォーツ-針鉄鉱入水晶
【Goethite in Quartz】India
鉱物名:クォーツ
宝石名:ゲーサイト in クォーツ/サージェニティック・クォーツ
英名:Goethite in Quartz/Sagenitic Quartz
和名:針鉄鉱入水晶/針入水晶
モース硬度:7(水晶の硬度)
劈開:なし
産地:インド、カザフスタン、ロシア、ブラジル、メキシコetc...

処理:-

流通名:ゲーサイト in クォーツ
     ストロベリー・クォーツ
     苺水晶
     スーパーセブン(7種揃っている必要はない?)
     セイクリッド・セブン(7種揃っている必要はない?)
     エレスチャル(誤称を含む。スーパーセブンと関連)


透明水晶にゲーサイト(針鉄鉱)が内包されたもの。画像はインド産です。
ゲーサイトは水酸化鉄の一種で、結晶は針状で色は赤~黒。
メキシコ産・カザフスタン産の、細かな赤いゲーサイトがびっしりと入って苺色になった水晶は「ストロベリー・クォーツ」と呼ばれ、非常に人気があります。
そのストロベリー・クォーツの人気が高まるにつれ、結晶の大きいものや黒っぽいものなど、あまり苺らしくないゲーサイトinクォーツや、それ以外の赤い内包物の入った水晶、またそれに近いもの、見た目の少しでも似ているものが「ストロベリー・クォーツ」として流通するようになりました。

【Lepidocrocite in Quartz】
*ゲーサイトとレピドクロサイト*
同じく水酸化鉄で鱗状~針状の結晶を持つ、レピドクロサイト(鱗鉄鉱)という鉱物があります。
ゲーサイトとレピドクロサイトは同質異像の関係。組成が同じで、結晶形が違うものです。
赤いゲーサイトを多量に内包し苺色に見える水晶を「ストロベリー・クォーツ」と呼びますが、レピドクロサイト入りの水晶も「ストロベリー・クォーツ」として扱われることがあります。
しかし見た目はゲーサイトほど苺らしくはありません。
赤いレピドクロサイトを多量に含む水晶は「ファイア・クォーツ」または「ハーレクイン・クォーツ」と呼ばれます。
「ハーレクイン」とはパントマイムを演じる道化師の名前で、レピドクロサイトによる模様がハーレクインの履く斑模様のタイツを思わせることからきているようです。



*スーパーセブン? エレスチャル?*
7種の鉱物が共生するエレスチャルであるという「スーパーセブン(セイクリッド・セブン)」にレピドクロサイトやゲーサイトが含まれているため、レピドクロサイトやゲーサイトのみ内包された水晶であっても「スーパーセブン」という名前がつけられる場合があります。
曰く、「スーパーセブン」が産出された鉱山で取れたものは、7種揃っていなくとも「スーパーセブン」なのだとか。
「スーパーセブン」はパワーストーン関係のコマーシャルネームで鉱物名や宝石名とは扱いが異なるため、詳細は不明です。
また、スーパーセブンの扱い→しかし鉱物が7種揃っていない→では単なるエレスチャルに…という流れで、7種に満たない「スーパーセブン」が「エレスチャル」として流通したために、「エレスチャル=特定の内包物入り水晶」という誤解が生じ、エレスチャルと呼べる結晶以外のゲーサイトinクォーツまでが「エレスチャル」として流通する、ということが起きています。
表面が磨かれてしまっている場合は、元の形がエレスチャルであったかどうかは分かりません。
また「エレスチャル」が結晶の形を指す名前であるならば、原型が分からないほど磨かれたものに対して用いるというのは、如何なもの?
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Yati
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性別:
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職業:
アクセサリー作家
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写真、音楽、鉱物の蒐集、調べもの
自己紹介:
銀と鉱物でアクセサリーを作りつつ
宝飾業界のはじっこのほうで
いろいろ考えたり調べたり遊んだりしている
ただの石好きです。
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