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ivy cageの工房に散らばる石ころのご紹介。
レピドクロサイト in クォーツ-鱗鉄鉱入水晶
【Lepidocrocite in Quartz】
鉱物名:クォーツ
宝石名:レピドクロサイト in クォーツ
英名:Lepidocrocite in Quartz
和名:鱗鉄鉱入水晶
モース硬度:7(水晶の硬度)
劈開:なし
産地:マダガスカル、ブラジル、ナミビアetc...

処理:-

流通名:レピドクロサイト in クォーツ
     ファイア・クォーツ(炎、火の粉のような様子から)
     ハーレクイン・クォーツ(道化師の斑の衣裳から)
     ストロベリー・クォーツ(誤称?)
     苺水晶(誤称?)
     スーパーセブン(7種揃っている必要はない?)
     セイクリッド・セブン(7種揃っている必要はない?)
     エレスチャル(誤称を含む。スーパーセブンと関連)


透明水晶にレピドクロサイト(鱗鉄鉱)が内包されたもの。
レピドクロサイトは水酸化鉄の一種で、結晶は鱗状~針状で色は赤~黒。
赤いレピドクロサイトを多量に含む水晶は、外観から「ファイア・クォーツ」と呼ばれます。
「ハーレクイン」とはパントマイムを演じる道化師の名前。
ハーレクイン(イタリア語ではアルレッキーノ、フランス語ではアルルカン)は斑模様のタイツを履いており、レピドクロサイトの模様がこれを連想させたためでしょう。

【Goethite in Quartz】India
*ストロベリー・クォーツ?*
同じく水酸化鉄で針状の結晶を持つ、ゲーサイト(針鉄鉱)という鉱物があります。
レピドクロサイトとゲーサイトは同質異像。組成が同じで、結晶形が違うものです。
赤いゲーサイトを多量に内包し苺色に見える水晶を「ストロベリー・クォーツ」と呼びますが、レピドクロサイト入りの水晶も「ストロベリー・クォーツ」として扱われることがあります。
そもそも「ストロベリー・クォーツ」と呼ばれるものはメキシコ産・カザフスタン産の、細かな赤いゲーサイトがびっしりと入って苺色になった水晶のこと。
しかしストロベリー・クォーツの人気が高まるにつれ、赤い内包物の入った水晶、もしくはそれに近いもの、見た目の少しでも似ているものが「ストロベリー・クォーツ」として流通するようになりました。
例えば、ゲーサイトではあるけれど結晶の色が黒いものや、クォーツ・シストに赤いエピドートを含むもの、レピドクロサイト結晶の目立つサンストーン、そしてレピドクロサイトを含む水晶。
「ストロベリー・クォーツ(っぽい石)」のなかでは、成分的に最も近いものはレピドクロサイトインクォーツでしょう。しかし見た目や色味の違いもあり、やはり苺というよりは炎や斑模様のほうがしっくりとくるような気がします。



*スーパーセブン? エレスチャル?*
7種の鉱物が共生するエレスチャルであるという「スーパーセブン(セイクリッド・セブン)」にレピドクロサイトやゲーサイトが含まれているため、レピドクロサイトやゲーサイトのみ内包された水晶であっても「スーパーセブン」という名前がつけられる場合があります。
曰く、「スーパーセブン」が産出された鉱山で取れたものは、7種揃っていなくとも「スーパーセブン」なのだとか。
「スーパーセブン」はパワーストーン関係のコマーシャルネームで鉱物名や宝石名とは扱いが異なるため、詳細は不明です。
また、スーパーセブンの扱い→しかし鉱物が7種揃っていない→では単なるエレスチャルに…という流れで、7種に満たない「スーパーセブン」が「エレスチャル」として流通したために、「エレスチャル=特定の内包物入り水晶」という誤解が生じ、エレスチャルと呼べる結晶以外のレピドクロサイトinクォーツまでが「エレスチャル」として流通する、ということが起きています。
表面が磨かれてしまっている場合は、元の形がエレスチャルであったかどうかは分かりません。
また「エレスチャル」が結晶の形を指す名前であるならば、原型が分からないほど磨かれたものに対して用いるというのは、如何なもの?
シトリン-黄水晶
シトリン バーント・アメシスト バーント・スモーキークォーツ
【Citrine】Gilgit, Pakistan
 
鉱物名:クォーツ
宝石名:シトリン
英名:Citrine
和名:黄水晶
モース硬度:7
劈開:なし
産地:ブラジル、インド、スコットランド、スイス、フランス、スペイン
    ドイツ、パキスタン、マダガスカル、チリ、ジンバブエ、日本etc...

処理:アメシスト加熱、スモーキー・クォーツ(または透明水晶)照射+加熱

流通名:シトリン
     黄水晶
     マディラ・シトリン(バーント・アメシスト)
     パルメィラ・シトリン(バーント・アメシスト)
     リオグランデ・シトリン(バーント・アメシスト)
     ビア・シトリン/ビア・クォーツ(バーント・スモーキークォーツ)
     シャンパン・シトリン/シャンパン・クォーツ(バーント・スモーキークォーツ)
     コニャック・シトリン/コニャック・クォーツ(バーント・スモーキークォーツ)
     レモン・シトリン/レモン・クォーツ(バーント・スモーキークォーツ)
     シトリン・トパーズ(誤称)
     リオグランデ・トパーズ(誤称)


シトロン(クエン樹)の果実の色に似た、黄色い水晶をシトリンと呼びます。
宝石としての人気は強く流通量もありますが、天然のシトリンは非常に稀少です。
現在流通しているシトリンの多くは2種類の加熱処理石と言われています。
「バーント・アメシスト」は、アメシストの紫色の発色要因である鉄イオンのFe4+とFe2+が、加熱によりFe3+に変化することで黄色く発色したもの。
「バーント・スモーキークォーツ」は、加熱によってアルミニウムイオンのAl4+がAl3+に変化することで色が薄くなり、鉄イオン(Fe3+)の黄色い発色が残ったもの。
スモーキークォーツ自体、アルミニウムイオンを含むクォーツに放射線を照射することで濃い茶~黒色に調整されたものが多く、照射と加熱の組み合わせによって様々な色調のシトリン(ビア・シトリン等)が作られています。

※鉄分の含有量が少ないスモーキークォーツは加熱しても黄色く発色しないため、
  透明に近い色になるそうです。
  
【Citrine】Brazil
 
バーント・アメシストのうち、赤味の強いものは「マディラ・シトリン」、明るい黄色は「パルメィラ・シトリン」と呼ばれます。
「ビア・シトリン(ビア・クォーツ)」「シャンパン・シトリン(シャンパン・クォーツ)」「コニャック・シトリン(コニャック・クォーツ)」「レモン・シトリン(レモン・クォーツ)※硫黄水晶とは別」などはバーント・スモーキークォーツのカラーバリエーションと言われています。
 
 
【Sherry Topaz】Utah, USA
 
*シトリンとトパーズ*
シトリンの誤称(フォールスネーム)に「トパーズ」の関連したものがあります。
かつてザクセン地方産のシェリーカラーのトパーズが流行した際、一部の宝石商がシトリンを黄色いトパーズと偽って流通させたことが発端のようです。
黄色いトパーズを指す「インペリアル・トパーズ」という言葉は、こういったシトリンとの区別のために生まれたもの。
現在も「シトリン・トパーズ」など、シトリンとトパーズを混同させる名前で流通しているケースがあるため注意が必要です。
ラジュライト in クォーツ-天藍石入水晶
Lazulite in Quartz】

鉱物名:クォーツ
宝石名:ラジュライト in クォーツ/ラズライト in クォーツ
英名:Lazulite in Quartz
和名:青水晶/天藍石入水晶
モース硬度:7(水晶の硬度)
劈開:なし
産地:マダガスカル、カナダetc...

処理:-

流通名:ラジュライト(ラズライト) in クォーツ
     天藍石入水晶
     青水晶
     ブルー・クォーツ
     ブルー・サンストーン(!?)


ラジュライトinクォーツ。
青い小さなラジュライト(天藍石)の結晶が内包された水晶です。
産出量は少なく、加工も難しいので稀少なのだとか。
写真のブリオレットは、インドの業者より「ブルー・サンストーン」という名前で仕入れたものです。
青いサンストーンというものは、今のところ存在しない筈。
アイオライトに含まれたヘマタイト等によるアベンチュレッセンスを示す「アイオライト・サンストーン」ならありますが、透明なクォーツに青い結晶を含むこの石とは大分違います。
ラジュライトinクォーツにしか見えないけれど、そんな流通名があっただろうか?
と疑問に思いつつ「ラジュライトでは?」と確認したところ、「そうかもしれないけど、ブルー・サンストーンの名前で入ってきてるから」との返答。
その後も「ブルー・サンストーン」のまま販売されていたようです。
ラジュライトinクォーツは分かりやすいほうですが、同じように不思議な名前をつけられて売られているもののなかには全く正体不明な石もあったりして、なかなかスリリング。
産地は分かりませんが、この色合いは恐らくカナダあたりのような?
写真では青く写り過ぎていますが、実際はもう少しくすんだ色をしています。
内包されたラジュライトのために水晶全体が青っぽく見えるので「ブルー・クォーツ」「青水晶」とも呼ばれます。

※「ブルー・クォーツ」「青水晶」は、内包物のために青く見える水晶の総称です。
  天然の水晶には、それ自体が青色をしているものはありません。
  水晶を青く見せる内包物は、他にインディコライト(ブルートルマリン)、ギラライト、
  クロシドライトやリーベッカイト、アエリナイト、デュモルチェライト、シャッタカイト、
  ブランシェアイト、パパゴアイト、アホーアイト等があります。
  また合成水晶やガラスの「ブルークォーツ」もあります。



*ラジュライトとラズライト*
ラジュライトの綴りはLazulite。
「ラズライト」と表記されることも多いのですが、最近では「ラジュライト」「ラジューライト」の表記が増えています。
それというのも、「ラズライト(Lazurite)」という、非常に間違われやすい石が他にあるため。
「ラズライト(Lazurite)」は、和名で青金石。ラピス・ラズリを構成する主成分です。
全く違う石なのですが、日本語ではLとRの区別が難しく、どちらも「ラズライト」と表記され混同されてしまうことが多いため、天藍石(Lazulite)のほうを「ラジュライト」「ラジューライト」と表記することになったようです。
スケルタル・クォーツ-骸骨水晶
Skeletal Quartz】Pakistan

鉱物名:クォーツ
宝石名:ロック・クリスタル
英名:Rock Crystal
和名:水晶
モース硬度:7
劈開:なし
産地:パキスタン、アフガニスタン、メキシコ、インド、ブラジルetc...

処理:-

流通名:スケルタル・クォーツ
     骸骨水晶
     ウィンドウ・クォーツ(窓の意)
     フェンスター・クォーツ(窓の意)
     エレスチャル・クォーツ

 
写真はパキスタン産のスケルタル・クォーツ(骸骨水晶)。
素直に訳すなら、骸骨というより「透けている、骨格が見えている」といったところでしょうか?
石英の結晶は層状に成長してゆきますが、結晶が短期間で形成されると、平らな面の縁や角の部分だけが目立って成長し、平らな面との差によって空洞が出来る「骸晶」を成すことがあります。
そのような骸晶を持つ水晶を「スケルタル・クォーツ」、凹んだ面が窓のようにも見えることから「ウィンドウ・クォーツ」「フェンスター・クォーツ」とも呼びます。
エレスチャル・クォーツと呼ばれる水晶のなかにスケルタルも含まれているらしく、エレスチャル=スケルタルのように扱われることもありますが、エレスチャルの全てがスケルタルではないので、イコールにはならないようです。
ロック・クリスタル-水晶
【Rock Crystal】Brazil

鉱物名:クォーツ
宝石名:ロック・クリスタル
英名:Rock Crystal
和名:水晶
モース硬度:7
劈開:なし
産地:ブラジル、マダガスカル、アメリカ、ドイツ、コロンビア、スイス
    オーストラリア、カナダ、スリランカ、日本、中国、メキシコ、ペルー
    パキスタン、アフガニスタン、インドetc...

処理:透明剤の充填(一部)

流通名:ロック・クリスタル
     クリスタル・クォーツ
     水晶
     白水晶

 
クォーツ(石英)のうち、透明な六角柱の結晶をロック・クリスタルと呼びます。
かつて西洋では、アルプスで採れるこの透明な石を氷の化石と考えていました。
「クリスタル」とは現代では結晶という意味を持ちますが、語源はギリシア語の「クリュスタロス」で、氷を指す言葉でした。
東洋では透明な石英は水の結晶、水の精と考えられていたため「水精」と呼ばれ、単なる石ではなく、水に纏わる霊的な存在と捉えられていたようです。
 
 
 
*合成水晶と溶練水晶*
市場に流通する「水晶」のなかに、天然水晶とは別に「合成水晶」や「溶練水晶」があります。
「合成水晶」は、天然の石英の結晶構造を人工的に作り上げた合成石。
天然ではありませんが、水晶の結晶を持っているため、水晶ということになります。
「溶練水晶」は、石英を一度溶かして再度固めたもの。
溶かした時点で石英の結晶構造が壊れるため、出来上がるのは水晶ではなく、石英を溶かして作る非晶質固体、つまり「石英ガラス」となります。
鑑別では「模造石(ガラス)」と出るそうです。
 
これら「合成水晶」や「溶練水晶」が、天然水晶と偽って装飾用に流通しているのでは?
といった声もありますが、今のところそれほどでもないようです。
合成水晶は天然水晶よりも生産コストがかかるため、専ら工業用に生産されています。
ビーズ等でもごく一部に合成水晶が見られますが、殆どは天然水晶です。
「溶練水晶」は水晶玉(占い師の方が用いるあれです)に多く、大きさや透明度に対して非常に安価です。
いずれも鑑別によって見分けることが出来ます。
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プロフィール
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Yati
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女性
職業:
アクセサリー作家
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写真、音楽、鉱物の蒐集、調べもの
自己紹介:
銀と鉱物でアクセサリーを作りつつ
宝飾業界のはじっこのほうで
いろいろ考えたり調べたり遊んだりしている
ただの石好きです。
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