ivy cageの工房に散らばる石ころのご紹介。
アイス・クリスタル-ヒマラヤ蝕像水晶
2012/10/15/Monday
【Ice Crystal】
Manikaran, Parvati Valley, Kulu, Himachal Pradesh, India
鉱物名:クォーツManikaran, Parvati Valley, Kulu, Himachal Pradesh, India
宝石名:クォーツ
英名:Ice Crystal
和名:ヒマラヤ蝕像水晶
モース硬度:7
劈開:不明瞭
産地:インド
処理:-
流通名:アイス・クリスタル
ヒマラヤ・アイス・クリスタル
ヒマラヤ蝕像水晶
エッチド・クォーツ(蝕像水晶全般を指す)
ニルヴァーナ・クォーツ/ニルヴァーナ・ストーン/ニルヴァーナ・クリスタル
ヒマラヤの麓に位置するクル地区マニカラン産のアイス・クリスタル。
うっすらとピンク色をしたものは、表面に酸化鉄が付着しているためです。
インド北部、ヒマーチャル・プラデーシュ州のクル渓谷は、標高約6000mの氷河地域。
温暖化の影響によってこの氷河が溶けた場所で、1995年に発見されたのが「アイス・クリスタル」なのだとか。
凸凹とした奇妙なエッチング(蝕像)は、水晶が結晶・成長する際に他種鉱物に成長を阻害されたことを表しています。
水晶がフッ化水素に溶かされたことを示すトライゴーニック(逆三角形の蝕像)も見られます。
※凸凹のエッチングが氷によるものでは?という話もありますが、石英が結晶・成長するほどの高温下で氷が溶けずにいられるものなのでしょうか…?
アイス・クリスタルはクラスター(群晶)になることなく、ひとつひとつの結晶がばらばらの状態で産出します。なかにはC面(底面)を持つ結晶もあり、これは天然水晶には非常に珍しい特徴となります。
また、結晶同士を軽く打ち合わせると高く澄んだ音が響くため、シンギング・クリスタルのひとつとしても知られています。
こちらは是非お試しあれ。
オパライズド・フローライト
2012/10/11/Thursday
【Morado Opal】Mexico
鉱物名:オパール
宝石名:オパライズド・フローライト/バイオレット・コモン・オパール
英名:Opalized Fluorite/Violet Common Opal
和名:-
モース硬度:4-6.5
劈開:なし
産地:メキシコ、アメリカ
処理:-
流通名:オパライズド・フローライト
バイオレット・コモン・オパール
フローライト・オパール
アイスクリーム・オパール
アイスクリーム・オパライト
モラド・(メキシコ産)
ティファニーストーン(アメリカ・ユタ産、混合石)
ティファニー・ジャスパー(アメリカ・ユタ産、混合石)
バイオレット・フレーム・オパール(メキシコ産、混合石)
ベルトランダイト(混合石を構成する鉱物のうちひとつを指す)
画像の石は、メキシコ産の「モラド・オパール」のノジュール。
「モラド」は現地の言葉(メキシコ・スペイン語)で紫色~やや暗めの紫色を指します。
オパライズド・フローライトとは、オパール化したフローライトのこと。遊色のないコモン・オパールです。
オパライズド・フローライトだけでなく更にカルサイト、カルセドニー、ロードナイト、ドロマイト、ベリル、コバルト、マンガン酸化物、ベルトランダイト、クォーツ、亜鉛等が混合したものに、アメリカ・ユタ産の「ティファニーストーン」やメキシコ産の「バイオレット・フレーム・オパール」があります。
火山活動によって堆積した様々な鉱物により、美しい模様が現れています。
産地が限られており、また産出量も少ないため、良質なものは稀少となっているようです。
*産地ごとの呼び分け*
最初に発見されたオパライズド・フローライトは、アメリカ・ユタ州のブラッシュウェルマン鉱山の「ティファニーストーン」。混合石を構成する鉱物のひとつを取って「ベルトランダイト」とも。
「ティファニーストーン」というコマーシャルネームの由来は、ティファニーの創設者の子息ルイス・カムフォート・ティファニーのステンドグラス作品(メトロポリタン所蔵)に似ていたことから、採掘者が名付けたそうです。
後にメキシコからも同じようなオパライズド・フローライトが産出し、区別のために「バイオレット・フレーム・オパール」や「モラド」という名前で呼ばれているようですが、「メキシコ産ティファニーストーン」という名前も見掛けるため、実のところあまり区別されずに流通している可能性があります。
上の画像はティファニーストーンとして入手しましたが、もしかしたらメキシコ産かも?
シリシファイド・ピクチャー・サンドストーン-砂岩
2012/10/08/Monday
【Silicified Picture Sandstone】
岩石名:サンドストーン
宝石名:シリシファイド・ピクチャー・サンドストーン
英名:Silicified Picture Sandstone
和名:砂岩
モース硬度:7
劈開:-
産地:南アフリカ、アメリカ、フランス、ロシア、エジプトetc...
処理:-
流通名:ピクチャー・ジャスパー(ジャスパーではない)
ピクチャー・ストーン
シリシファイド・ピクチャー・サンドストーン
カラハリ・ピクチャー・ストーン(カラハリ砂漠産出のみ)
ウッディな色調、風景画のような模様を持ち「ピクチャー・ジャスパー」と呼ばれるこの石は、実はジャスパーではなく岩石の一種。
正確には「シリシファイド・ピクチャー・サンドストーン」。
「シリシファイド・サンドストーン(砂岩に珪酸が染み込んで固まり、珪化したもの)」のうち、風景画のような模様を持つものを指します。
黄色っぽい砂岩を地として、酸化鉄等が斑や縞の模様を作っています。
カラハリ砂漠で採れるものは別名「カラハリ・ピクチャーストーン」と呼ばれますが、こちらは鉱山が既に閉山しているため、現在ではレアなのだそうです。
サルファー in クォーツ-硫黄水晶
2012/10/07/Sunday
【Sulfur in Quartz】Irece, Bahia, Brazil
鉱物名:クォーツ
宝石名:サルファー in クォーツ/レモン・クォーツ
英名:Sulfur in Quartz/Lemon Quartz
和名:硫黄水晶/檸檬水晶
モース硬度:7(水晶の硬度)
劈開:なし
産地:ブラジル、ロシア
処理:-(硫黄内包によるもの)
スモーキー・クォーツ照射+加熱(透明なもの)
ロック・クリスタル照射+加熱(透明なもの)
流通名:サルファー in クォーツ(硫黄内包のみ)
硫黄水晶(硫黄内包のみ)
レモン・クォーツ(スモーキークォーツ加熱を含む)
檸檬水晶(スモーキークォーツ加熱を含む)
レモン・シトリン(スモーキークォーツ加熱)
スター・レモン・クォーツ(レモン色ミルキークォーツ。アステリズムを示す)
画像はブラジル・バイーア州イレセー産のサルファーinクォーツ。
サルファーinクォーツは、硫黄を内包することにより半透明~不透明のレモン色になった水晶のこと。「レモン・クォーツ」「硫黄水晶」とも呼びます。
割れたり傷付いたりすると、微かに硫黄の匂いがするそうです。
黄色い水晶といえばシトリンですが、シトリンの発色は含有された鉄によるもの。
一方サルファーinクォーツのレモン色は、透明な水晶に内包された硫黄自体の色が透けて見えているものなので、シトリンとは一応区別されているようです。
因みに「レモン・シトリン」という宝石もありますが、こちらは以下に挙げる、透明なレモン色の水晶のことを指しています。
【Burnt Smoky Quartz】Brazil
*透明なレモン・クォーツ*
「レモン・クォーツ」は本来、硫黄によるレモン色が特徴の水晶のことを指していましたが、現在市場に流通している「レモン・クォーツ」(特に装飾品)のほとんどは、透明なレモン色をした水晶です。
硫黄が発色原因のレモン・クォーツであれば、黄色く見えるほど硫黄が内包された時点で透明度はなくなってしまい、透き通ったレモン色にはなりません。
「レモン・シトリン」とも呼ばれる透き通ったレモン色の水晶の正体は、スモーキー・クォーツや透明水晶の色を照射と加熱によって調整した処理石、もしくはガラスの模造品。
シトリンの記事でも触れましたが、市場に流通する大半のスモーキー・クォーツには色を濃く整えるための照射処理が施されていますし、アルミニウムイオンを含む水晶を照射することで作り出すことも出来ます。
スモーキー・クォーツを加熱すると色が薄くなり、鉄分の含有具合によって様々な色調のシトリンになります。
透明なレモン・クォーツもこの一種であり、発色原因は硫黄ではなく鉄。
レモン色の水晶なので「レモン・クォーツ」という名前自体はしっくりくるのですが、サルファーinクォーツとの混同のために、透明のレモン・クォーツが硫黄入り水晶として扱われていることが少なくありません。
そのためか、硫黄入り水晶は「レモン・クォーツ」の名称を避け、わかりやすく「サルファーinクォーツ」と称されることが多くなっている様子。
画像のスフィアは、ブラジル産スモーキー・クォーツへの加熱によって作られたレモン・クォーツ。一部にスモーキー・クォーツのファントムが見られます。
*スター・レモン・クォーツ*
上記二つとはまた別に、アステリズム(スター効果)を示す「レモン・クォーツ」があります。
こちらはレモン色をしたマダガスカル産のミルキー・クォーツ(またはジラソル・クォーツ)で、外見は乳白色の半透明。
「イエロー・ミルキー・クォーツ」「イエロー・ジラソル・クォーツ」とも呼ばれます。
ミルキー・クォーツのアステリズムは、特有のミルキーカラーの発色原因である微細な結晶によるもの。
内包物が酸化チタンの場合は、これが針状結晶(つまりルチル)となって平行に並んでいるとシャトヤンシー(キャッツアイ効果)が、更に2~3方向に交差しているとアステリズム(スター効果)が現れます。
内包物がシリマナイトの場合も、結晶は繊維状のため、ルチルと似た効果を示すようです。
内包物がコロイド状のアルミナ(酸化アルミニウム)の場合は、アステリズムの他にオパレッセンス(オパールのような乳白色の散乱光)やプレイ・オブ・カラー(遊色効果)を示します。ミルキー・クォーツのうち、「ジラソル・クォーツ」や「メタモルフォシス」と呼ばれるものにこの特徴が見られます。
因みにこれらのスターはダイアステリズム(透過光によるスター効果)なので、光を当てるなら表からではなく裏側から。
ペンライトや晴れた日の太陽などの強い光を当てると、4~6条のスターが見られます。
是非お試しあれ。
グリーン・クォーツ-緑水晶
2012/10/07/Sunday
【Green Quartz】
鉱物名:クォーツ
宝石名:グリーン・クォーツ
英名:Green Quartz
和名:緑水晶
モース硬度:7
劈開:なし
産地:ブラジル、アメリカ、ジンバブエ
処理:照射+加熱(グリーン・クォーツ)
加熱(グリーンド・アメシストのみ)
流通名:グリーン・クォーツ(緑色のクォーツを指す)
グリーンド・アメシスト(誤称含む)
グリーン・アメシスト(誤称含む)
プラシオライト(誤称含む)
「グリーンド・アメシスト」という宝石があります。
1954年、ブラジルのバイア州のモンテズマ鉱山から産出されたアメシストを約650℃で加熱したところ、通常は黄色く変化しシトリンになる筈が、この産地のアメシストは透明な若草色に変化しました。
「アメシスト」は紫色の水晶を指す宝石名です。
緑色であるならばアメシストではなく通常はグリーン・クォーツと呼ばれますが、緑色に変化するアメシストが珍しかったこともあり、このアメシストには特別に「グリーンド・アメシスト(緑色になった紫水晶)」のコマーシャルネームがつけられました。
また、ギリシア語の「明るい緑色」を由来とする「プラシオライト」という愛称もあります。
ブラジルの他にもアメリカのアリゾナ州、カリフォルニア州、ネバダ州、ジンバブエ等でも同じ性質を持つアメシストが産出しましたが、産出量は少なく、大変に稀少且つ高価なものでした。
しかしある時から、大粒で質の良い「グリーンド・アメシスト」が大量に流通するようになり、それが人為的に放射線の照射と加熱処理が行われたグリーン・クォーツであることが分かりました。
これは「天然の照射により、加熱のみで緑色に変化するアメシスト」である従来のグリーンドアメシストとは異なるため「グリーンド・アメシスト」「プラシオライト」とは別のものと判断されたのですが、市場ではすっかり同じものとして定着してしまいました。
現在、大粒のルースやビーズとして安価で入手出来る「グリーンド・アメシスト」は、ほとんどがこの照射・加熱処理によるグリーン・クォーツであると考えられます。
しかしその二種類のグリーン・クォーツが区別されることはなく、多くの場合「モンテズマ産(または他産地)の稀少な緑色のアメシスト」として紹介されています。
これだけたくさん、しかも安価に流通していて、稀少性をアピールされることには疑問が残ります。
宝飾業界ではいつものことといえばそれまでですが、これではまるで木を隠す森のよう。
本当のグリーンド・アメシストに巡り合うには、ちょっとひと手間掛かります。
【Prasiolite】LOC.Montezuma,Bahia,Brazil
*プラシオライト/グリーンド・アメシスト*
ブラジル・バイア州のモンテズマ鉱山から産出された、本家「グリーンド・アメシスト」。
非常に淡い色をしていますが、抹茶色寄りの渋めのグリーンもあるようです。
こちらは加熱のみで出る色。
地熱による加熱のみで、産出時に既に緑色に変化しているものは「プラシオライト」と呼び分けられている、という話もあります。
【Amegreen】Brazil
*アメグリーン*
こちらはブラジル産(鉱山は不明)で、「アメグリーン」と呼ばれているもの。
やや渋めのグリーンクォーツに、ラヴェンダーカラーのアメシスト部分が残っています。
なかにはこの2色がファントムになっているものも。
ブラジルの他に、南アフリカでも産出します。
プロフィール
HN:
Yati
HP:
性別:
女性
職業:
アクセサリー作家
趣味:
写真、音楽、鉱物の蒐集、調べもの
自己紹介:
銀と鉱物でアクセサリーを作りつつ
宝飾業界のはじっこのほうで
いろいろ考えたり調べたり遊んだりしている
ただの石好きです。
宝飾業界のはじっこのほうで
いろいろ考えたり調べたり遊んだりしている
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