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ivy cageの工房に散らばる石ころのご紹介。
スターバースト・ルチル-放射ルチル
【Hematite with Rutile】Novo horizonte, Bahia, Brazil

鉱物名:ルチル/ヘマタイト
宝石名:-
英名:Rutile on Hematite/Rutile Sun/Hematite with Rutile
和名:金紅石/赤鉄鉱
モース硬度:6-6.5(ルチル)/5-6(ヘマタイト)
劈開:二方向に明瞭(ルチル)/なし(ヘマタイト)
産地:ブラジル、パキスタンetc...

処理:-

流通名:ルチル オン ヘマタイト
     ヘマタイト・ルチル
     スターバースト・ルチル
     スター・ルチル
     フラワー・ルチル
     ルチル・サン
     放射ルチル
     太陽ルチル


黒いヘマタイトの結晶を中心に、平行に並んだルチル(酸化チタンの針状結晶)が放射状に延びたものは、放射ルチル、太陽ルチルなどと呼ばれています。
画像はブラジル産のゴールド・ルチル。
ヘマタイトを伴うゴールド・ルチルはクォーツに内包された状態で産出することが多く、タイチン・ルチルとして流通している場合もあります。

「タイチン・ルチル(太金針水晶)」とは、平行に並び束になったものや板状、針の太いゴールド・ルチルが水晶に内包されたルチレイテッド・クォーツを指すコマーシャルネーム。
タイチンのように束にならず隙間を残した状態で、平行に並んだルチルがシャトヤンシー(猫目効果)を示すものは「キャッツアイ・ルチル」と呼ばれます。
ルチル-金紅石
【Rutile】Congo

鉱物名:ルチル
宝石名:ルチル
英名:Rutile
和名:金紅石
モース硬度:6-6.5
劈開:二方向に明瞭
産地:ブラジル、シエラレオネ、ロシア、アフガニスタン、マダガスカルetc...

処理:-

流通名:ルチル
     金紅石
     ティタニア(人工ルチル)


ルチルとは、酸化チタンの針状結晶のこと。
単体でアクセサリーなどに用いられることはあまりないようです。
また、ルチル結晶を内包したクォーツである「ルチレイテッド・クォーツ」が略称で「ルチル」と呼ばれていることが多いため、「ルチル=針入り水晶」という誤解が広まっています。
他種鉱物の針状結晶と混同されがちですが、ルチルには鋭い金属光沢があり、透けると赤く見える特徴があります。
 
ルチルの色は、基本的に金・銀・赤~茶・黒。単体では金色や濃い赤~黒の結晶がよく見られ、発色には鉄分の含有量が関係しています。
10%以下の鉄を含むと金色、鉄やマンガンの含有量が増えると赤茶色になるのだそう。
鉄が30%以上になると黒色になりますが、黒いルチルは比較的稀らしく、「ブラック・ルチル入り水晶」として流通しているもののほとんどはブラック・トルマリンかエジリンの針状結晶を含む水晶と見られます。



*スター石のルチル*
スター・ローズ・クォーツ、ミルキー・クォーツ、スター・ルビーやスター・サファイア。
これらに見られるスター(アステリズム)は、内包されるルチルが原因となっています。
ローズ・クォーツやミルキー・クォーツのスターは、発色原因でもある微細なルチル結晶によるもので、平行に並んだルチルに裏側から強い光を当てることで4~6条スターを示す「ダイアステリズム」。
スター・ルビーなどのコランダムの場合は、シルク・インクルージョンと呼ばれる密集したルチル結晶があり、表面にも2~3方向へ走る細かな筋が見えます。これに正面から強い光を当てると、4~6条のスター「エピアステリズム」を示します。
ただ透明度の高いローズ・クォーツと思っていたら、ペンライトでスターが出た!なんてこともあり、ちょっとした宝探しが楽しめます。
トラピッチェ・アメシスト
【Trapiche Amethyst】
鉱物名:クォーツ
宝石名:トラピッチェ・アメシスト/ゲーサイト イン アメシスト
英名:Trapiche Amethyst/Goethite in Amethyst
和名:紫水晶/針鉄鉱入紫水晶
モース硬度:7
劈開:不明瞭
産地:ブラジル、マダガスカルetc...

処理:-

流通名:トラピッチェ・アメシスト
     ゲーサイト イン アメシスト
     カコクセナイト イン アメシスト(カコクセナイトは誤称?)
     スーパーセブン(7種揃っている必要はない?)
     セイクリッド・セブン(7種揃っている必要はない?)
     エレスチャル(誤称を含む。スーパーセブンと関連)


放射能標識のような模様のアメシストに、さらに中心へ向かって放射状の模様を成すゲーサイト結晶が内包されたトラピッチェ・アメシスト。
「トラピッチェ」はスペイン語で、サトウキビを搾る農機具のこと。
トラピッチェに使われる6本スポークの歯車の形に似ていることから、6方向へ放射状の模様を持つ石には「トラピッチェ」の名がつけられます。



*ゲーサイトとカコクセナイト*
画像に見られる金茶色の針状結晶は、放射状~扇状に結晶したゲーサイトなのですが、これを「カコクセナイト」とする表記がかなり見られます。
カコクセナイトはリン酸塩鉱物の一種で、岩の間などに隠れるように結晶していたりしますが、水晶に内包されることは稀なようです。
おそらく誤解のもとは、『宝石・貴金属大辞典』における「カコクセナイトとは紫色、もしくは茶水晶の地に黄色のゲーサナイト・インクルージョンを含むもの」との記述ではないかと思われます。
ここから何故、茶色いゲーサイトを「カコクセナイト」と誤称するに至ったかはわかりません。
 
カコクセナイトは独立した鉱物です。
カコクセナイトインクォーツとして流通していた石を鑑別機関(中央宝石研究所)へ持ち込み、「ゲーサイト入りの水晶をカコクセナイトと呼ぶのか?」と問い合わせたところ、それは誤りであるとのこと。「誤解されているが、この内包物(金茶色の放射状の結晶)はゲーサイトであり、ゲーサイトを内包していてもカコクセナイトとは呼ばないので混同しないように」との回答でした。
この回答を信じるなら、少なくとも現在、『宝石・貴金属大辞典』のカコクセナイトに関する記述は誤りということに。
 
カコクセナイトは金茶色で放射状の結晶を持ち、画像のような金茶色の放射状結晶も、これがカコクセナイトであると言われれば納得してしまうほどに似ています。
しかし私の知る限りでは、この内包物に関しては「ゲーサイトであり、カコクセナイトではない」という鑑別結果ばかりで、カコクセナイトが出たという話は聞きません。
ただ、「ゲーサイト入り水晶」や「茶色いゲーサイト」が「カコクセナイト」ではない、ということだけは確かなようです。
サファイア-青玉
【Sapphire】Sri Lanka
 
鉱物名:コランダム
宝石名:サファイア
英名:Sapphire
和名:青玉/蒼玉
モース硬度:9
劈開:なし
産地:ミャンマー、スリランカ、タイ、インド、マダガスカル、タンザニア、
   パキスタン、アフガニスタンetc...

処理:加熱、加熱+鉛ガラス含浸(色つきガラスの場合あり)
    ベリリウム拡散加熱処理(表面から内側へかけての着色)

流通名:サファイア
     ピンク・ルビー(ピンク・サファイアの誤称)
     レッド・サファイア(ベリリウム拡散加熱処理による赤色のサファイア)


コランダムのうち赤いものを「ルビー」、その他の色を「サファイア」と呼びます。
ルビーの記事でも触れましたが、ピンクサファイアとルビーの境は非常に曖昧で、赤に限りなく近いピンクなどは鑑別のたびにルビーとサファイアの間を彷徨ったりします。
たまに、ピンク色のコランダムを「ピンク・ルビー」と称していることがありますが、ピンクと判断された時点でサファイアになるので、この名前には矛盾があります。
インド産の濃いピンクのコランダムが「ルビー」とされているケースも多いようです。
何故「ルビー」にしたいかといえば、「サファイア」よりも「ルビー」のほうが価値が高いとされ、価格にも差が出るから、という理由が大きいようです。
 
【Sapphire】Umba river, Tanzaia & Pakistan & Afghanistan
 
サファイアには色の改善を目的とした加熱処理が施されるのが通常で、非加熱でも美しいものは非常に限られます。
特にビーズに加工されるような宝石質以下の安価なものは、加熱か、加熱+含浸処理が施されている場合が殆どです。
これもルビーと同じで、「非加熱」「ナチュラル」との表記があっても、調べてみたら加熱済みのパターンがよくあります。
画像のルビー~ピンクサファイアには加熱が施されています。
さらに鉛ガラスによる含浸処理により透明度が上がったものも増えています。
こういったものを「高品質」として販売している場合があるため、目が慣れていない場合は要注意。

こうした処理の有無が問題になるのは、価格や価値の問題もありますが、それ以上に耐久性に違いが出てくるからです。
コランダムは、加熱すると少し脆くなります。
また、鉛ガラス含浸処理を施されるものにはもともと大きな傷があるので、衝撃に弱いこと、それ故に超音波洗浄や修理などが出来ないこと、鉛ガラスが酸に弱く溶け出す場合があるため、通常のコランダムのように扱うことが出来ないのです。

加熱や含浸処理自体は、見目のよくないコランダムを美しく見せるための技術なので、正しく扱いさえすれば何も問題はありません。
一番の問題は、こうした処理について知識がなかったり、知っていながら隠して販売してしまうケースが多いこと。
処理が施されていることをマイナス要素として受け止めているために、売りやすさ優先で無処理と偽ってしまう(または無処理と誤解されやすい表記をする)ようです。


【Corundum】Tanzaia

*ベリリウム拡散加熱処理*
鉛ガラス含浸と並んで近年かなり増えているのが、ベリリウムを表面拡散したサファイア。
ベリリウムとは、ベリルに含まれる原子番号4の元素。それを加熱によってサファイアの表面に拡散すると、表面から内部にかけて色が浸透します。
ベリリウムを表面拡散した大きめのサファイアを輪切りにすると、ウォーターメロン・トルマリンのように内側と外側で色が違うとのこと。
もとが透明なら明るい黄色のイエロー~ゴールデンカラーに、もとがピンク色ならパパラチャのようなオレンジッシュ・ピンクに変化するそうです。

パパラチャ・サファイアは希少価値が高く、高価で人気もある宝石。
このパパラチャのなかに、ベリリウムの表面拡散により色を作られたものが混じって流通していることがGIA(米国宝石学協会)の発表で明らかになり、問題となったのが2001年。 
中央宝石研究所の方の話では、ルースでもかなり出回っているが、特にビーズに加工されているもので綺麗な黄~オレンジ系のサファイアはほぼベリリウム拡散加熱処理によるものとのこと。
その話を伺った後、緑や青のサファイアからもベリリウムが出たとのことなので、色に限らず多くのサファイアに施されている可能性があります。
 
一時期「レッド・サファイア」という名前の赤いサファイアがあり、何故ルビーではないのか?と疑問に思っていたところ、どうやらベリリウムの拡散によって赤く発色したタイ産のサファイアであったことが分かりました。
流通の現場に於いて、ベリリウム拡散加熱処理についてはっきりと触れられているケースはまだ少なく(ビーズに関しては絶望的)注意が必要ですが、単なる着色とは異なり、色落ちの心配はないようです。
アルマンディン・ガーネット-鉄礬柘榴石
【Almandine Garnet】Pakistan
 
鉱物名:ガーネット
宝石名:アルマンディン・ガーネット
英名:Almandine Garnet
和名:鉄礬柘榴石
モース硬度:7-7.5
劈開:なし(裂開:一方向に明瞭)
産地:インド、カナダ、ブラジル、アフガニスタン、スリランカ、中国、日本etc…

処理:-

流通名:ガーネット
     レッド・ガーネット(アルマンディンまたはパイロープを指す)
     コモン・ガーネット(ありふれた普通のガーネットの意)
     アルマンディン/アルマンダイン/アルマンダイト・ガーネット
     柘榴石
     鉄礬柘榴石
     シリアン・ガーネット(紫がかったもの)
     セイロン・ルビー(スリランカ産。ルビーは誤称)
     オーストラリアン・ルビー(オーストラリア産。ルビーは誤称)
     カーバンクル(主にカボションを指す)
     金剛砂(研磨剤として使用)


ガーネットにも様々な色がありますが、真っ先に思い浮かぶのは深い赤色のアルマンディン。
アルマンディンはガーネットグループに属する石のうち最も産出量が多く、目に触れる機会も多い身近な宝石のひとつです。
同じ赤色のパイロープとは非常に似ており、色だけでは区別のつかないものもありますが、基本的にはパイロープは血のような赤色、アルマンディンはそれよりもやや紫がかった暗赤色を示します。

ガーネットグループの中でのアルマンディンはパイラルスパイトに分類されます。
パイラルスパイトとは、アルミニウムを含むガーネットであるパイロープ、アルマンディン、スペサルティンの3種類の名前を合わせたもの。これらはアルミニウム・ガーネットと呼ばれることもあります。
アルマンディンは鉄とアルミニウムを含み、鉄が多くなるほど赤黒くなります。
また、鉄の一部がマグネシウムと置換されるとアルマンディンとパイロープの中間のロードライトに、マンガンと置換されるとスペサルティンになります。
それぞれ純粋な結晶は非常に稀少で、大抵は互いに混じり合った固溶体として産出するため、外見での区別が難しいものは「ガーネット」として一括りに扱われています。
ペグマタイトの中に産出するアルマンディンは不純物の混入が少ないために透明度が高く宝飾向きですが、雲母の中に産出するものには不透明なものが多く、宝石質の原石は採れないようです。


*金剛砂*
彫金では日常的に「金剛砂(こんごうしゃ)」と呼ばれる研磨剤を使います。
すりガラスなどを作成する際のサンドブラスト加工で、表面に吹き付ける砂としても使いますが、それよりもさらに身近なのは、耐水ペーパー、サンドペーパーなどと呼ばれる、いわゆる紙やすり。
紙やすりは金剛砂を膠で紙に敷き詰めたもので、金属や木材などオールマイティーに使えますが、特に木材加工用などの際に使う目の粗い紙やすりからは赤茶色の小さな粒がポロポロと落ちます。あれがアルマンディンです。
紙やすりは、そのままずばり「ガーネットペーパー」とも呼ばれます。

「金剛砂」は、宝飾用にならない非常に小さなアルマンディン、不純物の多いコランダム、エメリー鉱などの鉱物を大きさでふるい分けて使う研磨剤の総称です。
「金剛」はダイヤモンドの和名にもなっており、要は「固い」ということ。さらに金剛砂を産出する奈良と大阪の境の山には金剛山と名がつきました。
金剛砂はホームセンターで袋売りされていたり、紙やすりとしてどこでも手に入れることができますが、それがガーネットであることについてはあまり意識されないものかもしれません。
うんと細かくなってしまうとただの赤茶けた粉末のようですが、荒目の紙やすりからぼろぼろ落ちた砂粒を拡大してよく見てみると、確かにガーネットの面影があります。
研磨剤としてのガーネットの歴史は古いものの、最近では炭化ケイ素などの人造研磨剤が主流になっているため、天然鉱物からなる金剛砂の使用は減少しつつあります。
 
 
*ブルー・カーバンクル*
アーサー・コナン・ドイル著の小説のなかに、「Blue Carbuncle」という宝石が登場します。「青いガーネット」「青い柘榴石」等と訳されますが、より正確に訳すなら「青いカーバンクル」です。
カーバンクルはラテン語で「燃える石炭」の意味。もとはアルマンディンの透明度を高く見せるためにカボションの裏側を刳り抜いて厚みを減らしたカットのことでしたが、転じてカボション型に磨かれた赤い宝石全般を指すようになったとのこと。
そのためカーバンクル=ガーネットとは限らないのですが、カーバンクルの代表的なものがガーネットであったなら、ガーネットを指していても不思議はありません。
しかし当時、ガーネットといえば赤いもの。緑色のガーネットが発見される以前の小説です。現在、青いガーネットは合成で作り出すことはできますが、自然界からは発見されていません。
ドイル氏が何を想定していたのかはわかりませんが、個人的にはホームズの発言「炭素の結晶」から、当初はガーネットではなく青いダイヤモンドになる予定だったのではないか…などと考えてしまいます。

※かつては「青い紅玉」との訳がありましたが、紅玉とはルビーの和名。
ルビーはコランダムの赤いもののみを指し、赤以外ならばサファイアになります。ルビーとサファイアは色で区別されるため「青いルビー」というものは存在しません。
近年ではこの点が見直され、「青いガーネット」「青い柘榴石」の訳が用いられています。
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プロフィール
HN:
Yati
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性別:
女性
職業:
アクセサリー作家
趣味:
写真、音楽、鉱物の蒐集、調べもの
自己紹介:
銀と鉱物でアクセサリーを作りつつ
宝飾業界のはじっこのほうで
いろいろ考えたり調べたり遊んだりしている
ただの石好きです。
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