ivy cageの工房に散らばる石ころのご紹介。
エレスチャル・クォーツ
2019/12/29/Sunday
【Elestial Quartz】Pakistan
鉱物名:クォーツ宝石名:ロック・クリスタル
英名:Rock Crystal
和名:水晶
モース硬度:7
劈開:不明瞭
産地:パキスタン
処理:-
流通名:エレスチャル・クォーツ(ジャカレー、スケルタルを含む場合あり)
骸骨水晶(誤称を含む。ジャカレー、スケルタルと関連)
「エレスチャル」はパワーストーン関係のコマーシャルネームで、産地や内包物に関わらず、晶癖に対して名付けられたもの。
鉱物学・宝石学に基づいたものではなく、また明確な定義も定められていませんが、凡そ「複数の結晶からなるごつごつとした複雑な形」を指します。
定義の曖昧さからジャカレー・クォーツ、スケルタル・クォーツと混同される(もしくは両者をエレスチャルに含む)場合も多く、和名としては本来スケルタルを指す「骸骨水晶」が使われているのを見かけます。
【Elestial Quartz】Pakistan
透明度は高いが、内部の気泡やクラックが多く一見白っぽい。
よく探すと水入りが紛れていたりする(右)
透明度は高いが、内部の気泡やクラックが多く一見白っぽい。
よく探すと水入りが紛れていたりする(右)
幾つもの結晶が折り重なり、骸晶を示すものや、他種鉱物や気泡、水など内包物を多く含む場合もあり目に楽しい水晶です。
その複雑さから「水晶の最終形態」「通常より長い時間を掛けて成長を繰り返した」などと語られることがありますが、実際には逆で、通常よりも早い速度で成長した為に出来た形であることがわかっています。
恐らくは珪酸濃度が高い熱水の中で、複数の結晶が一気に成長した為に入り組んだ形になったのではないでしょうか。
少なくともスケルタル同様に骸晶を示すものに関しては、成長が急速であったことは明らかです。(成長に長い時間を掛けた場合、面の部分にも珪酸が行き渡り凹みが生じない)
【Elestial Quartz】Pakistan
骸晶を示すエレスチャル。
骸晶を示すエレスチャル。
エレスチャルはヒーラーたちによって、非常に優れたパワーストーンとしてブームを巻き起こしました。それまでこの特殊な晶癖を指す名前がなかった為に、パワーストーン業界の外でも「エレスチャル」という名前が流用されています。
*スーパーセブンとエレスチャル*
現在、市場には二種類の「エレスチャル」があります。
本来エレスチャルと呼ばれていたものは上記の通り。
もう一つは誤称としてのエレスチャルで、これはスーパーセブンにも関連しています。
「スーパーセブン(セイクリッド・セブン)」は7種の鉱物が共生するエレスチャルであり、「ブラジルのエスピリット・サント州の鉱山から産出され、名付け親のヒーラーであるA・メロディ女史が認定したもの」のみを指します。(現在は鉱山が水没した為、新たな産出はないとのこと)
即ち「エレスチャル形状の水晶に、アメシスト、スモーキー・クォーツの部分を含み、ゲーサイト、レピドクロサイト、ルチル、カコクセナイトを内包し、メロディ女史の認定書がついた水晶」が本物のスーパーセブン。ただし同じ鉱山から産出しメロディ女史が認定していれば、必ずしも7種が揃っていなくても良いということです。(ここを徹底していれば面白かったのに)
が、これが大ブレイクしてしまった為、当然石を扱う卸業者たちは産地も形状も無関係に、似たような内包物入りの水晶を「スーパーセブン」として売り出しました。しかし認定されていないことを突かれると面倒な上に、原石の段階で7種の鉱物が共生していたかどうかなど知る由もないので、上記の内包物を含む水晶を「スーパーセブン」の代わりに「エレスチャル」として流通させました。他に「複数の内包物の存在を否定せず、且つ売れそうな名前」がなかったからです。
※この辺りは自分の関係する卸業者で実際に起こっていたことで、もしかしたら業界内に別の経緯があったかもしれません。とても興味があります。
スーパーセブン又はエレスチャルと誤称されがちなものたち。
インドからはゲーサイトやレピドクロサイト、アメシストが共生するエレスチャルが出ていますが、現在流通している「スーパーセブンっぽいエレスチャルの加工品」がこれとイコールかというとそうでもなく。
「ゲーサイト、レピドクロサイト、ルチル、カコクセナイトを内包する水晶かアメシストかスモーキークォーツかなんかそのあたり」が見境なく「エレスチャル」とされてしまい、区別が面倒になったかそもそも知識や興味のない小売業者たちもこれに倣った為、市場に流通するエレスチャルは見た目も価値基準も全く違う二種類が混在することになりました。
赤っぽければストロベリー・クォーツに、
黒っぽければスーパーセブン又はエレスチャルにと呼称が変わる
可哀想なものたち。
黒っぽければスーパーセブン又はエレスチャルにと呼称が変わる
可哀想なものたち。
この経緯から「エレスチャルとは特定の内包物入りの水晶を指す名前である」という認識が誤りであることが分かりますし、エレスチャルを求める際にはこれを頭に入れておかないと、違うものを入手してしまうことになるわけです。
ちなみに「スーパーセブン」という名前も、「メロディ女史の認める本物ではないが似てるので便宜上スーパーセブンと呼びます」という判断を下した業者によって定着してしまったので、例えば全く同じゲーサイトinクォーツが、扱う業者によってスーパーセブンになったりエレスチャルになったりルチルクォーツになったりします。
そもそもエレスチャルを磨いた場合は特有の外観が損なわれてしまうので、ラウンドやタンブルなどに加工されているものが本当に元々エレスチャルだったかは甚だ疑問ですし、本当にそのように加工しているのであれば原石原理主義者(もったいないおばけと読む)の出番だと思っています。
スケルタル・アメシスト-骸骨紫水晶-2
2019/12/29/Sunday
【Skeletal Amethyst】Brazil
鉱物名:クォーツ宝石名:アメシスト
英名:Amethyst
和名:紫水晶
モース硬度:7
劈開:不明瞭
産地:ブラジル
処理:-
流通名:スケルタル・アメシスト
エレスチャル・アメシスト(誤称を含む。スーパーセブンと関連)
スーパーセブン(誤称を含む)
ウィンドウ・クォーツ(窓の意)
フェンスター・クォーツ(窓の意)
骸骨紫水晶
ブラジル産「エレスチャル・アメシスト」のポリッシュとして購入。
ただしこれもエレスチャルというよりスケルタル・クォーツ(骸骨水晶)で、結晶面の凹みと内部に白~茶色の粘土鉱物のようなものが付着しています。
元の形が分からない為、これがエレスチャル(複数の結晶からなるごつごつとした複雑な形)の一部であったのか、元々スケルタル要素のみであったのかは不明です。
あるいはゲーサイトやレピドクロサイト等特定の内包物を含む水晶を「エレスチャル」と誤称する傾向が強いので、それに則っての呼称かもしれません。
【Skeletal Amethyst】Brazil
珪酸濃度の高い環境下で水晶が急速に結晶する際、成長の早い陵角に対し面の部分が取り残される形となり、結晶面の中心に髑髏の窪み又は窓のような凹みが生まれます。
【Skeletal Amethyst】Brazil
赤い小さな結晶はレピドクロサイト。右は底面から見た様子。
赤い小さな結晶はレピドクロサイト。右は底面から見た様子。
結晶自体の透明度は高く、ロック・クリスタルの部分とアメシストの部分、更に全体に散りばめられるように内包されたレピドクロサイト、奥の方には細長く伸びたゲーサイト結晶も見て取れます。
裏から見ると中心のアメシストがややトラピッチェ気味になっているのが分かり、こういう原石のままでは埋もれがちな個性がはっきりと出てくるのがポリッシュの良いところ。
ルーペで見るのが楽しくて仕方がありません。
【Skeletal Amethyst】Brazil
中の空洞のひとつにくっきりと丸い気泡。
わずかな水が取り残されているのがわかる。
中の空洞のひとつにくっきりと丸い気泡。
わずかな水が取り残されているのがわかる。
茶色い鉱物の成長によるものと思われるクラックに紛れて内部にはいくつかの小さな空洞があり、その中のひとつに水入りを見つけてガッツポーズからの激写。
通常、水入りは付加価値をプラスされ明確に目印がつけられているものが多いですが、これはクラックが多いのでひょっとしたら気付かれなかったのかもしれません。
ジャカレー・クォーツ-鰐水晶
2019/12/21/Saturday
【Jacare Quartz】Brazil
鉱物名:クォーツ宝石名:ロック・クリスタル
英名:Rock Crystal
和名:水晶
モース硬度:7
劈開:不明瞭
産地:ブラジル
処理:-
流通名:ジャカレー・クォーツ
アリゲーター・クォーツ
鰐水晶
エレスチャル・クォーツ(定義による)
ブラジル産のロック・クリスタル。
同一の方向にいくつもの結晶が並ぶ平行連晶で、鰐の背中のようにボコボコとした姿から「ジャカレー(ポルトガル語で鰐)クォーツ」「アリゲーター・クォーツ」と呼ばれるもの。名付けはブラジルの鉱山ですが、世界中から産出し、スモーキー・クォーツやアメシストなどにも見られます。
複雑な結晶の集合体であることからエレスチャルと一纏めに扱われている場合もあり、あまりしっかりと区別はされていない様子。
※エレスチャル:パワーストーン関係のコマーシャルネームで、明確な定義は定められていないが凡そ「複数の結晶からなるごつごつとした複雑な形」を指す。内包物とは無関係。
【Jacare Quartz】Brazil
幾つもの結晶が同一の軸を共有し、合体したまま成長する為、水や気泡、多種鉱物を内包し更に複雑な見た目になるものも多く、見た目の大変楽しい水晶ですが、結晶の揃う原因ははっきりと解明されていないようです。
レピドクロサイト in シトリン-鱗鉄鉱入黄水晶
2019/12/21/Saturday
【Lepidocrocite in Citrine】Madagascar
鉱物名:クォーツ
宝石名:レピドクロサイト in シトリン
英名:Lepidocrocite in Citrine
和名:鱗鉄鉱入黄水晶
モース硬度:7(水晶)
劈開:不明瞭
産地:マダガスカル
処理:?
流通名:エレスチャル・シトリン(誤称を含む。スーパーセブンと関連)
レピドクロサイト(鱗鉄鉱)が内包されたマダガスカル産シトリンです。
店頭での表記は「エレスチャルシトリン」となっておりましたが、エレスチャルという名前はそもそもスケルタルのように「ごつごつとした形の結晶の水晶」を示すもので、形に価値がある以上、画像のように磨いてしまう理由がありません。恐らくは流通現場で生じた誤称である「特定の内包物を含む水晶」の意で使用されているものと推測されます。正しい意味でのエレスチャル・シトリンはミナス・ジェライス産のものを見かけますが、見た目は全く異なります。
【Lepidocrocite in Citrine】Madagascar
レピドクロサイトは水酸化鉄の一種で、結晶は鱗状~針状で色は赤~黒。これを多量に含む水晶(レピドクロサイトinクォーツ)はその見た目から「ファイア・クォーツ」「ハーレクイン・クォーツ」とも呼ばれますが、上記のような「エレスチャル」と誤称される水晶やアメシストの一種でもあります。ただ、シトリンに含まれるものを見たのはこれが初めてでしたし、あまり流通してもいないようです。
【Lepidocrocite in Citrine】Madagascar
*加熱シトリン?*
シトリンはポピュラーな宝石ですが、実のところ天然のシトリンというものは非常に希少で、非加熱、天然色として保証されるもの以外ほとんどの流通品が、アメシストを加熱し作られる「バーント・アメシスト」、スモーキー・クォーツを照射・加熱し作られる「バーント・スモーキークォーツ」、もしくは科学組織と結晶構造を人工的に再現した合成シトリンとなっています。
アメシストからシトリンが作られる仕組みは、発色要因である鉄イオンのFe4+とFe2+が、加熱によりFe3+に変化することで紫から黄色の発色へ変わる為。
レピドクロサイトを内包するアメシストはそれほど珍しくなく、環境によってはそのシトリン版が産出されたとしても不思議はないのですが、流通品の中に標本が見つからず、かつそれほど希少なものであれば今回購入したもののように標本的価値のないポリッシュとしてのみ流通するのが不自然であることから、レピドクロサイトinアメシストから作られた加熱シトリンなのではないか?という疑惑が拭えません。
続報求む。
ピンクヘデンバーガイト in クォーツ/アイアンローズ
2016/10/04/Tuesday
Hanggang Mine, Chifeng Prefecture, Inner Mongolia A.R., China
鉱物名:クォーツ/ヘマタイト
宝石名:-
英名:Pink Hedenbergite in Quartz with Hematite
和名:灰鉄輝石内包水晶/赤鉄鉱
モース硬度:7(水晶)/5.5(ヘマタイト)
劈開:不明瞭(水晶)/なし(ヘマタイト)
産地:内モンゴル
処理:ー
流通名:ピンクヘデンバーガイト in クォーツ/アイアンローズ(ヘマタイト・ローズ)
内モンゴル自治区赤峰市ハンガン鉱山産の水晶。
この鉱山はかなり面白い形状の鉱物が産出されたのですが、今は採掘されていないとの話。ヘデンバーガイト入り水晶はパワーストーン方面から広まり、一部で大人気だったようです。
【Pink Hedenbergite in Quartz with Hematite】
Hanggang Mine, Chifeng Prefecture, Inner Mongolia A.R., China
表面の細かな蝕像、小さなブーケのようなヘマタイト、ヘデンバーガイトを内包したミルク色に、内部のアメシストが透けたチェリートップ。
内モンゴルではユニークな水晶が他にも見つかっており、それぞれ非常に面白くて見どころ満載ですが、この標本には流石に一目惚れしました。なんといっても色味が絶妙にかわいい。
でこぼこぎざぎざした表面も、蝕像好きとしてはたまりません。
へデンバーガイト入り水晶といえば、やや黄味を帯びた緑色をしたものが有名。
元々は透明度の高い水晶にヘデンバーガイトの微細結晶が無数に含まれることで、とろみのあるミルキーな色合いになっています。
こちらのヘデンバーガイトはほとんど白に近く、さらにトップ部分にアメシストが内包されていることで、ぽっと明かりが灯るような美しい姿に。
ピンクへデンバーガイトと呼ばれますが、ヘデンバーガイト自体がピンク色というわけではないようです。
マンガンが含まれている?という情報もありますが、定かではありません。コロイド状のヘマタイトも赤く発色するので、混同されている可能性もありますね。
【Pink Hedenbergite in Quartz with Hematite】
Hanggang Mine, Chifeng Prefecture, Inner Mongolia A.R., China
こんもりとした花束のような、ウニのようなヘマタイト結晶。Hanggang Mine, Chifeng Prefecture, Inner Mongolia A.R., China
この形状はヘマタイト・ローズと呼ばれます。
たまらなくかわいらしい。
【Trapiche Quartz】Inner Mongolia A.R., China
*中身はトラピッチェ?*ヘデンバーガイトを輪切りにすると、中はトラピッチェ模様になっていることがあるようです。画像でしか見ていませんが、同じ産地のピンク水晶も、切ると中のピンク色をした部分がトラピッチェ模様になっているものがありました。
内モンゴルのトラピッチェ・クォーツ(鉱山不明)として購入したこちらのスライスも、水晶・ヘデンバーガイト共に色味が似ており、もしかしたら同じものなのかもしれません。
切ってみたいけど流石に我慢します。
※ヘデンバーガイトは単体で見るとお茶葉のような渋い濃緑色をしています。
プロフィール
HN:
Yati
HP:
性別:
女性
職業:
アクセサリー作家
趣味:
写真、音楽、鉱物の蒐集、調べもの
自己紹介:
銀と鉱物でアクセサリーを作りつつ
宝飾業界のはじっこのほうで
いろいろ考えたり調べたり遊んだりしている
ただの石好きです。
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