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ivy cageの工房に散らばる石ころのご紹介。
グリーン・クォーツ-緑水晶
グリーン・クォーツ
【Green Quartz】

鉱物名:クォーツ
宝石名:グリーン・クォーツ
英名:Green Quartz
和名:緑水晶
モース硬度:7
劈開:なし
産地:ブラジル、アメリカ、ジンバブエ

処理:照射+加熱(グリーン・クォーツ)
   加熱(グリーンド・アメシストのみ)

流通名:グリーン・クォーツ(緑色のクォーツを指す)
     グリーンド・アメシスト(誤称含む)
     グリーン・アメシスト(誤称含む)
     プラシオライト(誤称含む)


「グリーンド・アメシスト」という宝石があります。
1954年、ブラジルのバイア州のモンテズマ鉱山から産出されたアメシストを約650℃で加熱したところ、通常は黄色く変化しシトリンになる筈が、この産地のアメシストは透明な若草色に変化しました。
「アメシスト」は紫色の水晶を指す宝石名です。
緑色であるならばアメシストではなく通常はグリーン・クォーツと呼ばれますが、緑色に変化するアメシストが珍しかったこともあり、このアメシストには特別に「グリーンド・アメシスト(緑色になった紫水晶)」のコマーシャルネームがつけられました。
また、ギリシア語の「明るい緑色」を由来とする「プラシオライト」という愛称もあります。
ブラジルの他にもアメリカのアリゾナ州、カリフォルニア州、ネバダ州、ジンバブエ等でも同じ性質を持つアメシストが産出しましたが、産出量は少なく、大変に稀少且つ高価なものでした。
 
しかしある時から、大粒で質の良い「グリーンド・アメシスト」が大量に流通するようになり、それが人為的に放射線の照射と加熱処理が行われたグリーン・クォーツであることが分かりました。
これは「天然の照射により、加熱のみで緑色に変化するアメシスト」である従来のグリーンドアメシストとは異なるため「グリーンド・アメシスト」「プラシオライト」とは別のものと判断されたのですが、市場ではすっかり同じものとして定着してしまいました。
 
現在、大粒のルースやビーズとして安価で入手出来る「グリーンド・アメシスト」は、ほとんどがこの照射・加熱処理によるグリーン・クォーツであると考えられます。
しかしその二種類のグリーン・クォーツが区別されることはなく、多くの場合「モンテズマ産(または他産地)の稀少な緑色のアメシスト」として紹介されています。
これだけたくさん、しかも安価に流通していて、稀少性をアピールされることには疑問が残ります。
宝飾業界ではいつものことといえばそれまでですが、これではまるで木を隠す森のよう。
本当のグリーンド・アメシストに巡り合うには、ちょっとひと手間掛かります。


プラシオライト グリーンド・アメシスト
【Prasiolite】LOC.Montezuma,Bahia,Brazil

*プラシオライト/グリーンド・アメシスト*
ブラジル・バイア州のモンテズマ鉱山から産出された、本家「グリーンド・アメシスト」。
非常に淡い色をしていますが、抹茶色寄りの渋めのグリーンもあるようです。
こちらは加熱のみで出る色。
地熱による加熱のみで、産出時に既に緑色に変化しているものは「プラシオライト」と呼び分けられている、という話もあります。


アメグリーン
【Amegreen】Brazil

*アメグリーン*
こちらはブラジル産(鉱山は不明)で、「アメグリーン」と呼ばれているもの。
やや渋めのグリーンクォーツに、ラヴェンダーカラーのアメシスト部分が残っています。
なかにはこの2色がファントムになっているものも。
ブラジルの他に、南アフリカでも産出します。
オレゴン・サンストーン-日長石
【Oregon Sunstone】Oregon, USA

鉱物名:フェルスパー
宝石名:オレゴン・サンストーン/ラブラドライト
英名:Oregon Sunstone/Labradorite
和名:日長石/曹灰長石
モース硬度:6-6.5
劈開:完全
産地:アメリカ

処理:-

流通名:オレゴン・サンストーン
     サンストーン・ラブラドライト


オレゴン・サンストーンは、その名の通りアメリカ・オレゴン州で産出するサンストーン。
1917年に発見された新種で、透明度の高いオレンジ~緑色のボディに、非常に細かい砂のようなアベンチュレッセンスを示します。
サンストーンといえばインド産のオリゴクレースにヘマタイトを内包したものが代表的ですが、オレゴン産のサンストーンはアンデシン(中性長石)とバイトウナイト(亜灰長石)の中間の石で、ラブラドライトに分類されます。
また内包物は銅の結晶片で、見た目にも大きな差があります。
アベンチュレッセンスだけでなくラブラドレッセンスや多色性(角度・光源により色が変化する性質)を示す石もあり、フェルスパーの中では特に評価が高く、高価な石です。
ルビー-紅玉
【Glassfield Ruby】Thailand & Antsiranana, Madagascar

鉱物名:コランダム
宝石名:ルビー
英名:Ruby
和名:紅玉
モース硬度:9
劈開:なし
産地:ミャンマー、スリランカ、タイ、インド、マダガスカル、タンザニアetc...

処理:加熱、加熱+鉛ガラス含浸(色つきガラスの場合あり)

流通名:ルビー
     ピンク・ルビー(ピンク・サファイアの誤称)


コランダムのうち赤いものを「ルビー」、その他の色を「サファイア」と呼びます。
ルビーとピンクサファイアの境は非常に曖昧で、鑑別でも場合によってルビーと出たりサファイアと出たり。ルビーとして仕入れたものが、鑑別結果を見たらピンク・サファイアだった…ということもしばしば。
サファイアよりもルビーの方が価値があるとされ、価格も高くなるので、なかにはピンク・サファイアにルビーの値をつけ、「ルビー」「ピンク・ルビー」として販売されているケースもあります。
ピンク色の時点でルビーの定義を外れているため、「ピンク・ルビー」という名前には矛盾があるのですが。

ルビーには色の改善を目的とした加熱処理が施されるのが通常で、非加熱でも美しいものは非常に限られます。
特にビーズに加工されるような宝石質以下の安価なものは、加熱か、加熱+含浸処理が施されている場合が殆どです。
サファイアにも同じことが言えますが「非加熱」「ナチュラル」との表記があっても、調べてみたら実はしっかり加熱済み、なんていうことも日常茶飯事。
画像のルビー~ピンクサファイアには鉛ガラスが含浸されています。
こちらも「加熱処理」として販売されていることがありますが、よく突っ込んで訊くと加熱+含浸、というケースがあります。
販売者側が処理についての正しい知識を持っていない場合も少なくないようです。


【Glassfield Ruby】Antsiranana, Madagascar

*鉛ガラス含浸ルビー(ニューヒート/グラスフィールド)*
鉛ガラス含浸ルビーとは、もとは不透明で傷の多いルビーを加熱すると同時に鉛ガラスを染み込ませ、内部の傷を埋めてしまうことで透明度を劇的に改善させたもの。
無処理もしくは加熱処理のみのルビーと区別するため、「含浸」「鉛ガラス含浸」「鉛含浸」「ニューヒート」「グラスフィールド」等の注釈が添えられますが、言及されていないケースも多々あります。

鉛ガラス含浸ルビーは近年大量に流通しており、非常に安価で美しいため人気がありますが、通常のルビーと同じように扱うことは出来ません。
粒全体の透明度が上がるほどガラスを含浸させるには、元となるルビーに内部まで到達する傷がある程度入っている必要があります。また、加熱と同時にガラスを含浸させるのですが、加熱による色の改善だけでなく、ガラスにも色がついている場合があります。
画像の2つのルビーは同じ含浸ルビーのビーズ。右側は薬品で少しガラスを溶かし出したもので、傷の多さがよく分かります。

ルビーのモース硬度は9で、劈開はなし。本来は丈夫な石の筈ですが、加熱によって脆くなっていることに加え、罅はガラスで埋められているだけなので、割れやすいのです。
衝撃や振動、超音波洗浄などはNG。
また、含浸されているガラスは熱や酸に弱く、弱酸性の家庭用洗剤や、レモンジュースでダメージが見受けられたとの報告もあります。
通常、肌に触れる程度では問題ないようですが、なるべく酸性のものを避け、普段から水洗いなどでケアしておく必要があります。

慣れるとある程度は質感で判別することも可能ですが、手っ取り早くガラス含浸かどうかを見分けたいときは、ガラス含浸の特徴であるフラッシュ(虹)の確認や、酸洗いなどの方法があります。
酸洗いには市販のピックリングコンパウンド(主成分:亜硫酸水素ナトリウム)が安全でお手軽。酸に浸していて、表面に白い被膜のようなものが出てきたり、明らかに透明度が落ちたり、それまでになかった罅が見えたりしたら、酸で鉛ガラスが溶け出したことになります。
ピーターサイト
【Pietersite】

鉱物名:クォーツ(多結晶質)
宝石名:ピーターサイト/クロシドライト・アゲート
英名:Pietersite/Crocidolite Agate
和名:-
モース硬度:6.5-7
劈開:なし
産地:ナミビア、中国、ロシアetc...

処理:-

流通名:ピーターサイト
     ブルー・ピーターサイト
     テンペスト・ストーン
     クロシドライト・アゲート
     クロシドライト・クォーツ


ピーターサイト、別名クロシドライト・アゲート。
クォーツもしくはアゲートに青~茶褐色のクロシドライトがぎっしり詰まって、ところどころ絹のようなシャトヤンシー(キャッツアイ効果)を示します。
渦巻く模様が嵐を連想させることから「テンペスト・ストーン」とも呼ばれます。
最初に発見されたナミビア産のものは青~灰~黒色がメインですが、後に中国で産出された茶~黒色が多く混じるタイプもあり、区別のために青っぽいほうを「ブルー・ピーターサイト」と呼び分けているようです。

クロシドライトは、和名で「青石綿」。
アンフィボール(角閃石)グループのリーベッカイトが非常に細い繊維状に結晶したもので、アスベストの一種です。
色は青~灰色ですが、含まれている鉄分が酸化すると金~茶色に変化します。
このクロシドライトに珪酸が染み込んで固まり、珪化したものが「ホークス・アイ(鷹目石)」。
更にクロシドライトの鉄分が酸化してリモナイト(褐鉄鉱)になり、茶色くなったものが「タイガーズ・アイ(虎目石)」。
これが加熱されるとリモナイトがヘマタイト(赤鉄鉱)に変化して赤くなり「レッド・タイガーズ・アイ(赤虎目石)」となります。
そうして出来たホークス・アイとタイガーズ・アイが地殻変動等によって砕け、再び珪化により自然に接合されることでピーターサイトが作られます。

アスベストであるクロシドライトには毒性がありますが、加工品として流通するものはしっかりと珪化して固まっているものが殆どのため、あまり気を遣う必要はありません。
もしも鉱物標本や、何気なく売られている原石の一部、そして万一ルースやビーズ等のなかに、繊維がほどけてふわふわの毛が見えているものがあれば、直接触ったり吸い込んだりしないようにご注意を。
鑑賞する場合は飛散しないよう、ケースに密封してご覧ください。
ゲーサイト in クォーツ-針鉄鉱入水晶
【Goethite in Quartz】India
鉱物名:クォーツ
宝石名:ゲーサイト in クォーツ/サージェニティック・クォーツ
英名:Goethite in Quartz/Sagenitic Quartz
和名:針鉄鉱入水晶/針入水晶
モース硬度:7(水晶の硬度)
劈開:なし
産地:インド、カザフスタン、ロシア、ブラジル、メキシコetc...

処理:-

流通名:ゲーサイト in クォーツ
     ストロベリー・クォーツ
     苺水晶
     スーパーセブン(7種揃っている必要はない?)
     セイクリッド・セブン(7種揃っている必要はない?)
     エレスチャル(誤称を含む。スーパーセブンと関連)


透明水晶にゲーサイト(針鉄鉱)が内包されたもの。画像はインド産です。
ゲーサイトは水酸化鉄の一種で、結晶は針状で色は赤~黒。
メキシコ産・カザフスタン産の、細かな赤いゲーサイトがびっしりと入って苺色になった水晶は「ストロベリー・クォーツ」と呼ばれ、非常に人気があります。
そのストロベリー・クォーツの人気が高まるにつれ、結晶の大きいものや黒っぽいものなど、あまり苺らしくないゲーサイトinクォーツや、それ以外の赤い内包物の入った水晶、またそれに近いもの、見た目の少しでも似ているものが「ストロベリー・クォーツ」として流通するようになりました。

【Lepidocrocite in Quartz】
*ゲーサイトとレピドクロサイト*
同じく水酸化鉄で鱗状~針状の結晶を持つ、レピドクロサイト(鱗鉄鉱)という鉱物があります。
ゲーサイトとレピドクロサイトは同質異像の関係。組成が同じで、結晶形が違うものです。
赤いゲーサイトを多量に内包し苺色に見える水晶を「ストロベリー・クォーツ」と呼びますが、レピドクロサイト入りの水晶も「ストロベリー・クォーツ」として扱われることがあります。
しかし見た目はゲーサイトほど苺らしくはありません。
赤いレピドクロサイトを多量に含む水晶は「ファイア・クォーツ」または「ハーレクイン・クォーツ」と呼ばれます。
「ハーレクイン」とはパントマイムを演じる道化師の名前で、レピドクロサイトによる模様がハーレクインの履く斑模様のタイツを思わせることからきているようです。



*スーパーセブン? エレスチャル?*
7種の鉱物が共生するエレスチャルであるという「スーパーセブン(セイクリッド・セブン)」にレピドクロサイトやゲーサイトが含まれているため、レピドクロサイトやゲーサイトのみ内包された水晶であっても「スーパーセブン」という名前がつけられる場合があります。
曰く、「スーパーセブン」が産出された鉱山で取れたものは、7種揃っていなくとも「スーパーセブン」なのだとか。
「スーパーセブン」はパワーストーン関係のコマーシャルネームで鉱物名や宝石名とは扱いが異なるため、詳細は不明です。
また、スーパーセブンの扱い→しかし鉱物が7種揃っていない→では単なるエレスチャルに…という流れで、7種に満たない「スーパーセブン」が「エレスチャル」として流通したために、「エレスチャル=特定の内包物入り水晶」という誤解が生じ、エレスチャルと呼べる結晶以外のゲーサイトinクォーツまでが「エレスチャル」として流通する、ということが起きています。
表面が磨かれてしまっている場合は、元の形がエレスチャルであったかどうかは分かりません。
また「エレスチャル」が結晶の形を指す名前であるならば、原型が分からないほど磨かれたものに対して用いるというのは、如何なもの?
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プロフィール
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Yati
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職業:
アクセサリー作家
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写真、音楽、鉱物の蒐集、調べもの
自己紹介:
銀と鉱物でアクセサリーを作りつつ
宝飾業界のはじっこのほうで
いろいろ考えたり調べたり遊んだりしている
ただの石好きです。
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